(書評)真犯人

著者:翔田寛



東名高速裾野バス停で男性の他殺体が発見された。被害者は、派手好きで借金も多い男性。しかし、その経歴を調べると意外なことが判明する。それは、41年前に発生した未解決の男児誘拐殺人事件の被害者の親であった。事件を担当することとなった日下は、時効直前に、その事件の特別捜査班を指揮することとなった重藤に、当時の話を聴きに行く。そこで重藤が話したのは……
著者の作品を読むのは久々。『誘拐児』辺りもそうだけど、昭和辺りの時代を舞台にするのが好きなのかな? まぁ、『参議怪死ス』は明治初期だし、古い時代を舞台にした作品が得意、と言えるのかも。
で、物語のメインとなるのは、昭和63年。時効を間近に迎え、それを防ぐべく編成された特別捜査班。従来の捜査では、犯人を捕らえられなかったことへの反省から、重藤は、忌憚のない意見、それまでの批判も構わないという方針での捜査会議を提案する。特別捜査班に選ばれた6人のメンバーは、その状況で捜査を始めるのだが……
とにかく、この特別捜査班の「崩壊へ」という流れが面白い。過去の資料、さらに、その事件の現場に赴き、そして、関係者に直接当たり捜査をする捜査班の面々。しかし、それぞれが直当たりをする中、それぞれの「筋読み」は深刻な対立へ発展していく……。
それぞれが担当を別にし、そこで見たものから推理を組み立てていくのだから、当然、別の見方が出てくる。そこに「忌憚のない意見」。それは対立を煽るだけ。勿論、重藤の狙いは、それも織り込み済み。しかし、決定的な証拠が出ない中で、ある意味では「根拠のない」筋読み合戦に発展していき、やがて悲劇が起こり、捜査班は完全に崩壊してしまう……。最初から、未解決というのがわかっているのだから、過去の話のその結末は予想できたわけだけど、そこまでの過程が大好き。
そして、物語は再び現代へ戻って……。被害者男性が死の直前に見せた表情。そして、時効がやってきて、さらに20年以上のときが経過した過去の事件だからこその疑問点の発見。そして……。終盤のある人物の行動は、ちょっとやり過ぎの気もするが、2つの時代を舞台にした意味などもしっかりと感じられ、最後まで面白く読むことが出来た。

No.4048

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