(書評)しるしなきもの

著者:真藤順丈



母が弔われるその日、父は祝言をあげた。日本一のヤクザ組織・早田組組長、早田征城。そんな彼に捨てられた愛人の子・桂介は、その母の死をきっかけに組に入ることを決意する。父を抹殺し早田の血を絶つために……
という感じで、桂介が早田組に入り、父を抹殺するために組でのし上がっていく物語。純血主義を取り、男しか出世できない。外国人も出世できないし、裏切り者には容赦ない。そのような中で、男でも女でもない半陰陽という秘密を抱えながら、裏切るための出世をしていく。
暴力と硝煙と、という世界の話で、自分の部下として付けられた存在などを相手にも策略を仕掛けて……という日々が描かれていく。自分が裏切り者であることがバレれば、それでアウト。半陰陽であることがバレてもアウト。その中で、周囲を出し抜いていく。そんなものがスリリングさになっているのは確か。
……のだけど、これが意外なほどライト。著者の作品だと、『墓頭』とか、文字通りにバイオレンスで、ドロドロという印象の作品があるので、そのような作品を予想していたのだけど半陰陽な桂介の一人称が「ぼく」だったり、「あたし」だったり……はたまた、話そのものが結構、あっけらかんと進んでいくためか、そこまでの重さを感じなかった。これは、どこまで計画的なのかな? という感じ。
正直、これは好みの問題だと思うのだけど、この世界観やらから『墓頭』くらいにバイオレンスでドロドロという作品を期待していたのでかなり肩透かしという感がある。だって、ヤクザの世界で、裏切り者で、って行ったら、ノワール作品の王道だもの。重々しい話をどうしても期待してしまったのだ。それが蓋を開けてみたら、相当にライトだった、というわけであって……
最後に一応のひっくり返しとか、そういうのはあるし、最後まで楽しめたのは事実。ただ、どうしても、自分の期待していたものと違ったなぁ、という感が強い。

No.4052

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