(書評)LINEで子どもがバカになる 「日本語」大崩壊

著者:矢野耕平



子供たちの「日本語力」がかつてない危機にある。LINEを初めとしたSNSの隆盛、家族形態の変化、住環境の変化、英語教育……。そのようなものにより、どう日本語の危機が起きているのか、現役塾講師が指摘した書。ということになるだろうか。
なんだかなー……
まず言うと、日本語能力、国語教育をないがしろにして外国語教育、外国語教育なんていうのはダメだろう、という指摘についてはその通りだと思う。中学~大学まで英語を学んだはずなのにまともに喋れないっていうのは、逆に言えば、日本語が言語としてしっかりと根付いていて、それ以外が必要とされないから。それはそれで恵まれた状況じゃないか? という意見についても賛同したい。
ただ、それ以外については、何十年も前から連綿と言われ続けている「今の社会は~」「今の若者は~」に最近の機器とかを後付しただけ。読んでいて、小道具が違うけど、全く同じ論法の話を知っている、と何度思ったことか。
例えば、タイトルにもあるLINEについて。LINEというのは、比較的短文で会話をするように文章を書く。しかも、予測変換が多い。そのため、文章能力などが伸びない。またスタンプで感情表現をする。しかし、スタンプの種類は限られているため複雑な表現などは使えなくなる。さらに、グループ機能などで狭い関係に終始するのも問題。
……2000年ごろに全く同じ言葉を目にした経験がある(笑) 勿論、当時はLINEやスマホはない。では、何に対して言われていたのか、と言うと、携帯電話のメールである。スタンプを顔文字に、グループ機能をメーリングリストなどに置き換えれば、当時の言説の出来上がり、というわけである。
第2章。「敬語が使えなくなっている」と言うことで、その原因は家庭環境も問題だ、という。そこで著者が例に挙げるのは『クレヨンしんちゃん』のしんのすけと、『サザエさん』のカツオ。傍若無人で下品な言葉も普通につかうしんのすけは両親と子供という核家族で育ったから。拡大家族で育ったカツオは、大人などに囲まれて育ったからちゃんと敬語も使える、と話を展開する。
……家族環境以前に、幼稚園児のしんのすけと、小学5年生のカツオでは言葉遣いとか違って当然じゃないか? そもそも「今の若者は敬語がダメ」なんていうのは大昔から延々と言われていること。だからこそ、接客業などの新入社員研修では敬語などを徹底的に叩き込むのである。
近年、タワーマンションが増えているが、それが子供の季節感の喪失などに繋がっているという4章は笑いどころだらけ。著者の主張では、安全面への考慮から窓などは開かなくなっている。その代わり、空調が完璧に整備されている。快適だが、これでは気温の変化などを肌で感じられず、季節感を失ってしまう。また、規模が大きいため、人間関係が棟ごとなどになって広がりがない。
そもそも、タワーマンションが建っているのはどこだろう? 基本的には大都市だろう。うちの田舎にはない(笑) で、そこに住む人も、基本的には同じような地域に住んでいたはずだ。例えば、北海道の田舎に住んでいた人が、タワーマンションが出来たからと東京に移り住むとは思えない。そうすると、東京都の普通の住宅街とタワーマンションで季節感などがそこまで異なるだろうか?
さらに、窓などが開かず、快適な空調だから……。タワーマンションで暮らす人は、そこから一歩も出ない引きこもりなのだろうか? それなら季節感が感じられないかも知れないが、毎日、学校へ通い、塾などへ通い……と、している場合、そこまで大きな違いがあるだろうか?
最後の建物が巨大で人間関係が……っていうのは、高度成長期の巨大団地、ニュータウン開発などの頃に言われていたものと同じである。著者は1973年生とのことだが、コレが本当に問題を引き起こすのであれば、著者の世代で既に問題は起きていたのではないだろうか?
このように、大昔から言われている「こういう変化が駄目にしているはずだ」という言説に、最近のトピックスを後付しているようにしか思えない。本当なら、それこそ、日本語はそろそろ滅びているんじゃないかと私は思ってしまう。ところが、著者は序章において、「具体的なデータはないけど、だめになっていると実感している」と言う根拠のない言葉で断言するのみなのである。なんだかなー……って感じである。

……と書いたところで、著者の過去の著作について調べて見たら、『iPadで教育が変わる』なる本を著している。私は未読であるがAmazonなどのレビューを見る限り、肯定的に評価しているようである。そのような著者が、その過去の書の内容について一切言及がなかった(本書のプロフィール欄にもその書は書かれていない)のはなぜか気になるところである。

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