(書評)恩讐の鎮魂曲

著者:中山七里



埼玉県・川口の特養老人ホームで殺人事件が発生! 容疑者として逮捕されたのは、御子柴の少年院時代の恩師・稲見であった。取るものも取らず、恩師の弁護人に名乗りを上げる御子柴。御子柴の弁護を拒否する稲見だが、半ば強引に稲見の国選弁護人になった御子柴。被害者と稲見の関係を探る中、かつての事件について明らかになり……
シリーズ第3作。
このシリーズって、どちらかと言うとひっくり返し、というのがメインな気がしているのだけど、本作はひっくり返しよりも、御子柴についての掘り下げ、そして、テンポを重視したのかな? と感じた。
特養老人ホームを訪れた御子柴。事件を目撃した稲見と同じ入居者たちの証言を聞くが、一様に見えるのは何かを隠している印象。何か違和感を感じる証言の食い違い。そして、被害者である介護士・栃野の過去。
正直なところ、ここでも出てくる「罰せられない犯罪者」の問題は、著者のこれまでの作品と同じく、凄く一面的で薄っぺらいものなので、個人的にはもうええわ、という感じ。また、テンポの良さはあるんだけど、新発見をし公判にいき、さらに、というところで、更なる新事実が……というのは上手く行きすぎな感じもある。
ただ……そういう欠点を補って余りあるのが、黒幕とも言うべき人物の存在感であり、そして、稲見の決意と言ったところだろう。
罪にはちゃんと、それに相応しい罰を与えられなければならない。確かに、稲見が起こした事件の裏側には様々な事情があり、それは情状酌量などに値するかも知れない。しかし、自らが少年院で教えてきたことと矛盾しないようにしたい。そして……
一応、ネタバレにはなるけど、最終的には御子柴の敗北とも言える判決。ただ……判決文でもあったけど、ぶっちゃけ、御子柴の法解釈は相当に無理筋であって、これは仕方がない。ただ、どうなんだろう……? 御子柴が黒幕に対して、「塀の中の方が救いになることがある」と言ったのだけど、稲見の決意にはそういう部分があるんじゃないだろうか? 逆転勝利、とか、そういう形ではなかったことで、むしろ、御子柴について掘り下げとして成立した物語、という気がする。

No.4060

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  •  みたび、二転三転と!
  • 小説「恩讐の鎮魂曲」を読みました。 著者は 中山 七里 弁護士・御子柴礼司シリーズ3作目 過去作も読んでいまして、好きでして 今作は 御子柴礼司の医療少年院での恩師・稲見が殺人で逮捕されて・・・ という 設定だけで ワクワクとね ある種 彼の過去は描き切ったと...
  • 2017.07.03 (Mon) 07:36 | 笑う社会人の生活