(書評)臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族

著者:古野まほろ



言葉の真偽、虚偽を瞬時に判別できてしまう。それが、臨床真実士と呼ばれる本多唯花の持つ障害。そんな彼女の元に、旧家である文渡財閥の跡取り息子である文渡英佐を通し、依頼が入る。英佐の弟であり、継承順位2位であった慶佐を殺したのは誰なのか? 一族の中で嘘をついているのは誰なのかを鑑定して欲しい、と。外界からの接触を完全に遮断した、一族だけが住む村で彼女を待つものは……
「○○が真であるなら、××もまた真である」
なんか、大学時代、論理学の授業でこんなやりとりを耳にした気がする(私は、最初の3回くらい授業に出て、毎回、必ず爆睡した結果、単位を諦めた経験の持ち主である(笑)) そんな論理学のやりとりを一つのモチーフとした作品。井上真偽氏のデビュー作も同じようなモチーフだけど、講談社に論理学ブームでも来ているの?
ということで、四国に周囲を高い壁で囲い、外部から遮断された文渡家の一族だけがすむ「文渡村」が存在する。実質的にそこは治外法権状態で、一族の長である紗江子が依頼したのもあくまでも嘘をついている人間は誰か突き止める、というだけで、逮捕とか、そういうのは望んでいない。それは15年前、飛行機事故により一族の大半を喪ってからのこと。そして、その村には一族の4つの家が存在するのだが、後継者の座を狙い、互いに激しく対立している……
こういうと何だけど、この極めて人工的な村の存在。そして、莫大な遺産などが絡むとは言え、異常なほどに近い距離で、異常なほどに対立する4つの家族。そんな村の秘密……という辺りはかなりインパクトがあり、なるほどと驚かされた。その辺りは素晴らしい。
……のだけど、作中に出てくる、論理学の話が凄くテンポを悪くしてしまっている感じがする。確かに、ある言葉が真か偽か、と言う辺りを重ねることによって真相へと至っていくわけではあるのだけど、ユイカの特技というか、障害というかの条件がそもそもややこしい上に、説明とかでテンポが悪くなってしまうため、どうにも一気に読み進める、というのがしづらい。上に、私のような論理学初心者には解説が書かれていても「なんとなく」止まりで座りが悪い、というか……
ミステリと言えば事件を「論理的に」解決する、というのが醍醐味なのだけど、その論理を主軸にすると……。味はあるけど、人を選ぶ作品になってしまう気がする……

No.4067

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  •  臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族
  • 臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 著:古野 まほろ 発行元(出版): 講談社(タイガ文庫) ≪あらすじ≫ 言葉の真偽、虚実を瞬時に判別できてしまう。それが臨床真実士と呼ばれる本多唯花の持つ障害。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる。「一族のなかで嘘をついているのが誰か鑑定してください」外界から隔絶された天空の村で...
  • 2016.06.25 (Sat) 22:01 | 刹那的虹色世界
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