(書評)真実の檻

著者:下村敦史



大学生の洋平は、遺品整理の最中、隠されていた手紙を発見する。それは、赤嶺信勝という人物と母が恋人であり、赤嶺こそが父であることを示唆するものだった。(育ての)父は、そのことに触れないよう言うのだが、洋平は、赤嶺は、母の両親を殺した死刑囚であること、そして、冤罪が疑われていることを知り……
前作、『生還者』は異なるものの、社会派ミステリと言える作品を扱ってきた著者。本作もその系統で、テーマは「冤罪」。
物語の中心となるのは、洋平の実の父である赤嶺は殺人犯なのか? 冤罪なのか? という部分。ただ、そこに冤罪にまつわる様々なエピソードを付随する形で構成されている。
痴漢を訴えている女子大生。しかし、逮捕された容疑者は、していない、冤罪と訴えている。そして、その女子大生自身が狙っているもの。さらに、実際の事件を髣髴とさせる事件。冤罪というけど、死刑でなくとも人生を大きく狂わせる。一方で、「冤罪」を訴えることが救いになるケースも……。そして、そんな冤罪が作られる原因としての「有罪率」を巡る検察の態度に、人員不足などの司法そのものの問題……。
『検察捜査』(中嶋博行著)、『灰色の虹』(貫井徳郎著)などなど、冤罪とそこにまつわる司法の問題点を扱った作品は沢山あるのだけど、色々なエピソードを盛り込みながらも話をまとめる辺りはさすがだな、と感じる。
ただ、物語として、(育ての)両親の間の不自然な関係。その後の……。そういうところを考えると、ある程度、事件の真相についての予想が出来る部分がある。登場人物、関係者の数自体が限られているし。また、主人公について、(育ての)父との関係について疑うなら、血縁関係かどうかをハッキリさせようとするんじゃないか? 確かに、心象は黒という感じだろうけど、それだけで決め付けるかあぁ? と。そういうのは気になった。ちょっと心変わりが激しいような、という印象で。
そういう意味では、テーマ性の方を優先した、という感じかな?

No.4071

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村



スポンサーサイト

COMMENT 0