(書評)モップの精は旅に出る

著者:近藤史恵



英会話教室の事務職員・翔子の下に届いた手紙。そこには、生徒からの婚姻届が。しかし、翔子は、相手の男性とは殆ど会話すらしたことがない。戸惑う翔子だったが、その男性はさらに思わぬ行動に出て……(『深夜の歌姫』)
などの謎を清掃人キリコが解決するシリーズ第5作。全4編を収録。
前作を読んだのが、2011年7月なので、約5年ぶりに読んだこのシリーズ。今回は、前半の2編が英会話教室を舞台にし、独立した3編目を挟み、キリコ自身のエピソードの4編目という構成。
英会話教室を舞台とした最初の2編は、結構、そのシステムの抱える問題とか、そういうのを描いた「社会派」な印象を抱く。
前売りの「チケット制」を販売することで成り立つ教室。そして、職員はそのチケットの売上が一つの評価基準になる。すると、そのために生徒を褒めて、その気にさせて……。勿論、ある程度はどんな世界にもあること。でも……。そんなことをどうしても1編目は思う。
2編目は、人気講師の「ファンクラブ」があり、その講師を巡り、イジメが発生しているのではないか? という話。
こちらも、「この講師に教わりたい」という人もいるからこそ成り立つ商売。しかし、それが生徒と講師、という一線を越えて妬み、やっかみとなってしまったら……。しかも、そういう世界で最も追い詰められるのが誰かと言うと……
そんな世界のことを切り取ったような2編だと感じた。
そして、姉が急死し、キリコが部屋に閉じこもってしまって……という4編目。久々の大介視点での物語なのだけど、端々から、キリコのことを大事にしているのが伝わってくる。そして、だからこそ感じる、人間関係の難しさ。
家族だから、親戚だからこそ、ズケズケと入り込んでくる。心配と言う名で、エゴを押し付けてくる。本当、家族って素晴らしいもの……ばかりじゃないんだよね。そして、そんな中に入り込む悪意……
と書くと、暗い印象の話みたいに感じると思うけど、そういうエゴとかを描きつつも、それぞれちょっと明るい気分になれる匙加減もこれまで通り。なので、安心して読める作品に仕上がっている。
一応、これでシリーズ完結というのだけど、あとがきの著者の言葉によれば、「最後の事件」にはしたくなかった、とのこと。なので、またひょっこりと帰ってくることを期待しています(笑)

No.4072

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