(書評)玩具都市弁護士

著者:青柳碧人



知能と感情を持つ玩具が世に溢れてから40年あまり。人に捨てられ、荒んだ玩具たちと、落ちぶれた人間が集まるバッバ・シティは「悪魔のおもちゃ箱」と呼ばれる治外法権の町と化していた。町でパン屋を営む元弁護士のベイカーは、行き場を失った一人の少女・ミズキを保護する。そんなとき、二人の前に現れたキッチン玩具団のリーダー、キャプテン・メレンゲは、ベイカーに「殺玩具」事件の弁護を依頼する……(『ピギーバンクの密室』)
から始まる4編を収録した連作短編集。
ユニークな設定。そして、それを十分に活かしきったトリックが楽しい。そうなるのも、ここに登場するキャラクターが「玩具」である、ということを忘れるような人間味溢れるやりとりのせいだろう。
例えば、1編目。被害者は、カギのかかった部屋に置かれたバスタブの中で、AIに矢が突き刺さった形で発見された。密室と言っても貯金箱を模した建物で、僅かな隙間は存在している。しかし、部屋の構造上、その隙間から矢を放っても当てることは不可能……
これ、謎解きを呼んでいて「ああ、そうだった!」と思った。玩具たち、という設定は覚えているのだけど、それがどういうことなのか、というところまで考えが及んでいなかった。謎解きがされて、それを理解できる。その意味では、良い導入編と言えるだろう。
逆に3編目である『モグラたちの雄弁』。容疑者は黄色いジャケットを脱ぐことが出来ない玩具。そして、被害者の下へ向かったのは、そんな黄色いジャケットを着た者、ただ一人だと証人がいて……
これまでのエピソードはどちらかと言うと、人間と玩具では異なる部分があって、というのを前提に謎解きが進められるのだが、今度はそれを逆手に取った形のひっくり返し方が上手い。いや、確かに根本的な原因は異なるのだけど、人間でも起こり得る錯覚が玩具にも……。慣れてきたから、こそのサプライズ。
そんな中で、ベイカーの助手として動くミズキ。妙におどおどしかったり、しかし、鋭い推理の冴えがあったり……の中、4編目では対立する形に。そして、ベイカーが巻き込まれた事件の中で、彼女の正体が……。何だかんだで、ベイカーとミズキのコンビの相性の良さは間違いないし、ミズキの正体が判明してもその背後の事件は手付かず。このレーベルだと続編前提が多いだけに、これも、続編に期待したい。

No.4078

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