(書評)優しい死神の飼い方

著者:知念実希人



「魂を自縛霊化させないためには、生前から働きかけることが必要」 人々の魂を主のもとへ導く死神である私が、上司への進言したところ、犬のレオとなって地上のホスピスへ左遷……もとい、派遣されることとなった。後悔を抱えた患者達の未練を断ち切るため、その過去について解き明かしていくレオだったが……
これまで読んだ著者の『天久鷹央』シリーズは、医療の知識を用いて謎を解いてく、というミステリであるが、本作は舞台こそホスピス病院とは言え、医療的な話はない。あくまでも死を目前に控えた人々の過去と、そこが結びついて、というファンタジーになっている。
序盤の章は、どちらかと言うと長編というよりは短編と言った趣。戦時中の悲恋。殺人を犯してしまった男。そして、父子に裏切られ色彩を失った青年。それぞれの過去を読み取り、そして、彼らが思っている後悔について別の視点から解を与える。そして、未練をなくさせる。そんな感じで進むのだが……
確かに、読んでいる序盤のエピソードの時点でも、随分と近しい人間関係があるな、とか思うところはあるのだけど、それが結びついて思わぬ方向へと話が進んでいく。かつての殺人の舞台となった建物が、実は、現在のホスピス。そして、そこに隠された秘密を巡り、病院関係者が殺される、という危機になって……
まぁ、襲撃者が狙っているものがどこにあるのか? というのは、早い段階で予想できたし、また、末期ガン患者ばかりなのに、大立ち回りを演じてみたり、とか、ツッコミを入れようと思えば入れられる部分は結構ある。ただ、人間世界、現代日本の習慣などについて疎いレオのキャラクターによるコミカルさと、死を前にした人々の悲壮感のバランスが凄く良い。そして、上手くいきすぎとしても、ハッピーエンドになるのは安心感に繋がる。こうでなきゃ、って感じの締めだもの。
著者=医療系、みたいなことを思っていたのだけど、そういう作品でなくとも十分に楽しめる。それが良くわかった一作。

No.4084

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  • 優しい死神の飼い方 作:知念 実希人 発行元(出版):光文社 ≪あらすじ≫ 犬の姿を借り、地上のホスピスに左遷…もとい派遣された死神のレオ。戦時中の悲恋。洋館で起きた殺人事件。色彩を失った画家。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。しかし、彼の行動は、現在のホスピスに思わぬ危機を引き起こしていた―。天然キャラの死神...
  • 2016.07.12 (Tue) 20:58 | 刹那的虹色世界