(書評)僕の探偵

著者:新野剛志



渋谷の素人専門デリヘル・ラブホリックの店長を勤める僕、石川勇吾。僕の家には、半年前に再会して以来、学生時代からの友人・宗介が居着いてしまっている。仕事をやめ、再就職もせずに、ヨガやらに勤しんでいる彼は、僕の周辺で起きた事件を素人探偵となって次々と解決していき……
タイトルに見覚えがなかったので、文庫書下ろしかと思ったら、『素人がいっぱい ラブホリックの事件簿』の改題だった。正直なところ、主人公も探偵役も男なので、単行本のタイトル、及び、表紙に女性のイラストよりかは、本作の方がイメージにあっているかな? と思う。まぁ、文庫表紙のこのイラストもちょっとイメージと違うけど。
と、中身に関係のない話を続けていても何なので……
正直、デリヘルというのが題材にはなっているのだけど、そこまでその要素はなかったかな? と。一種のお仕事小説的な要素はるあるけど、面接だったり、常連とのやりとりだったり、在籍する女性のスケジュール管理だったり……。まぁ、家出した女性を捜しに来た男とのトラブルくらいかな? この舞台らしさ、っていう意味では。ただ、謎と、それに対する宗介の解決法が独特で魅力的。
例えば1編目。面接にやってきた女性。ところが、その直後に、その女性と思しき人物が殺された、と報道された。まさか? と思っていたら、ひょっこり現れて? 死亡したのは誰なのか? そして面接に来た女性は? 被害者と加害者、どちらがどちらなのか、というののひっくり返しに魅了された。
逆に2編目は、解決の為にとった宗介の方法が印象的。復讐を誓う相手を、どう止めるのか? 復讐を狙う人間は、暴力になれていない「普通の」人間。理性ではなく、感情で動いている人間を止めるには、それ以上の感情を想起させれば……。無茶苦茶ではあるのだけど、なるほどと納得できる、そして、それが宗介への掘り下げになっている。
そんなエピソードからもわかるように、物語はエリートの立場を捨て、世捨て人のようになった宗介の過去へ。
著者のデビュー作とかでもそうだったのだけど、関係者が皆、近場にそろいすぎ、と感じるところはある。ただ、各エピソードで垣間見せる宗介の人間性、抱えている過去。そういうのが出てくる中で、ワーストにしない、ワーストを回避するためにどう動いていたのか? というのが見えてくる。最終的に、主人公の行動がすべてを丸く治めたわけだけど、それがなかったら、宗介の優しい、でも、哀しい決断が下されざるを得なかったはず。それが回避できたのが救いか。
表紙のような、爽やかな物語とは言いがたい。でも、読後感は悪くない。

No.4092

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