(書評)代償

著者:伊岡瞬



平凡な家庭に生まれた圭輔。そんなとき、親戚の子・達也と出会う。ずる賢い雰囲気を出す達也に嫌悪感を抱く圭輔は、直後に起きた事件で両親を喪い、達也の家へ引き取られることに。それから数年、弁護士になった圭輔に入った刑事事件の弁護依頼。その依頼人は、達也であった……
著者の作品を読むのも久々だな~、と思って調べてみたら実に8年ぶり(笑) なので、著者の作品がどういう話だったのか、と細かいところは殆ど記憶の彼方に行っているのだけど、それまで読んだ作品は色々と「暗い」という印象があった。
本作もまた、そんな「暗い」という雰囲気がピッタリ。ただ、それがどう転がっていくのかが気になってどんどん読み進めることが出来た。
物語は1部、2部という2部構成。
1部は圭輔の少年時代。ある日、母の親戚だと紹介された達也。同い年、ではあるが、しかし、どこか暗い目をし、そして、自らの悪事の自慢に、母に対して性的な目を見せる彼に嫌悪感しか抱けなかった。だが、そんなときに両親を喪い、彼の家へ……。結果、周囲に居た友は離れていき、孤独な日々へ。そのような中、気にせずに接してくれたのは寿人と、美果。しかし、そんな美果が達也らに襲われた、という噂が流れ、美果は転校し、寿人もまた……
そんな嫌な雰囲気の少年時代から一気に時が流れ、若手弁護士となった圭輔。そこに入ったのは達也からの依頼。
強盗殺人で逮捕され、一度は容疑を認めた達也。だが、自分はやっていない、と無罪を主張。少年時代の記憶、そして、両親を喪った事件は「お前のせい」という達也の仄めかし。依頼を受けることにはなったが、圭輔自身の心象も真っ黒。それでも調査を続け、達也のアリバイを主張する証人と出会うが……
「人の心をかき乱し、コントロールする天才」
圭輔は達也のことをそう称するのだけど、まさにそんな感じ。折角見つけた証人。しかし、その相手を伴って挑んだ裁判では、思わぬ結末に。達也は一体、何を狙っているのか? そして、彼は一体、何をしたのか? 証人の心にある傷は?
平凡な家庭に育ち、達也の家に引き取られ、苦しい時代を過ごしたことがあるとは言え、最終的に仲間に恵まれた圭輔。そんな圭輔だからこそ、見逃してしまった周囲の人間の抱えた傷。それをついてくる達也。その中でもがく圭輔。
前半はとにかく暗い1部。その影を引きずった2部前半。裁判でのひっくり返しを経ての達也自身に、そして、自分自身への問いかけ。物語全体の構図が二転三転しながら錯綜していく流れにどんどん読むスピードが加速していった。
面白かった。

No.4104

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