(書評)アニメが地方を救う!? 「聖地巡礼」の経済効果を考える

著者:酒井亨



アニメの舞台、モデルとなった場所、ロケ地。そのような場所をファンが訪れる「聖地巡礼」。ファンが生み出したムーブメントは、自治体などの経済活性化策として注目されている。多くの地をフィールドワークした著者が、成功例、失敗例などを考察する書。
本書は第1章、2章で、アニメの歴史、その中でのアニメツーリズムの歴史などをしるし、第3章で、その成功例として『花咲くいろは』の事例を詳しく紹介する。そして、第4章、第5章では日本各地の事例などを綴り、第6章、7章でまとめ、という構成。
私の感想を一言で言うと「うーん……」。
著者のいいたいことが分かる部分は多いし、同感と思うところも多い。ただ、その一方で、「そうかな?」とか、「調査不足じゃない?」と思うところも結構あったりする。著者の、別の書の感想を調べていて、「学術的にしたいのか、それとも軽く読める雑学的な内容にしたいのかわからない中途半端さを感じた」というのがあるのだけど、それに近い感想を抱いた。
例えば、第1章、第2章の内容は、冒頭に書いた通りなのだけど、アニメと経済などについての色々な所見を引用している辺りは学術的にしたい、ように感じる。ただ、その一方で、作品について「おたく向け」と不用意な発言をしたりとか、宮崎勤事件を「アニメオタクの犯行」のように書いたりして「うーん」と感じる。前者については、そもそも「オタク」とは何か? とか、そういう定義づけが必要だろうし、後者については、宮崎死刑囚はアニメオタクではない、というような批判もある(彼の家にあった大量のビデオは、殆どが実写のバラエティ番組) そういうところが甘いのである。
そして、本書のある意味、メインとも言える4章、5章。日本各地の「聖地」について、概要と共に記しているのだが、それだけに広く浅く。そして、読んでいるとかなり主観的に感じる。
例えば『かんなぎ』の聖地となった場所について、著者は、公共交通機関を使った旅なので痛絵馬や、グッズなどを取り扱った場所には行かなかった。しかし、地域として作品を使って盛り上げようという熱意に乏しいと感じた、と結論付ける。最も盛り上がっている場所を訪れなかったら、それってメインを外しているんじゃないの? 逆に、失敗と言われる『輪廻のラグランジェ』については、鴨川市の担当者に取材するなどし、「失敗とは言えない」と結論付けている。その他にも、「よくわからない」みたいなものが多いのである。そういった態度の違いを見ると、客観的な指標、基準に基づく評価ではないよな、と思うのである。
先に書いた3章の『花咲くいろは』関連の諸々など、興味深いと思うところがあるだけに、それ以外の雑さを思わずにはいられなかった。

と書いたところで、作中に何度か『輪廻のラグランジェ』ネタが出たので、反応しておこう(笑)
私は鴨川市出身で、アニメ放映中には毎回、感想と共に、そこに出ていた鴨川市の舞台解説なども書かせてもらった。勿論、放映中を含めて、何度も鴨川は訪れている。だって、帰省せざるを得ないもの(笑)
私は、自分が参加している「アニ☆ブロ」が刊行した同人誌『アニブックログ2013』で、ラグりんの地域振興は「失敗」と結論付けた。ただ、著者の言うことも賛同できる部分は多い。その部分についていうと……
結局、「成功」「失敗」の線引きをどこにおくのか、という問題なのではないかと思う。
先に、私はラグりんを「失敗」と結論付けたと書いた。その理由としては、アニメ放映中であっても(私が訪れたのは2012年9月)、駅前の商店街などに、それを盛り上げようという気概は殆どなく、駅前のイオンのみやげ物コーナーの一角に僅かに名を冠した菓子がある程度。また、2015年5月に友人らと訪れた際にはシーワールドなどの観光地には示唆するものが存在していなかった。
それより時を前にした2014年の8月、私は茨城県の大洗町を訪れているが、そこでは町中で、『ガールズ&パンツァー』を盛り上げよう、という姿勢を感じた。そして、その時の私もそうなのだが、『ガルパン』が好きな人間と言うのは、別に何かイベントがあるから大洗に行く、というわけではないのである(勿論、イベントがあれば、もっと行くだろう)
ラグりん関連のイベントがあれば、ファンが訪れる。それは間違いないだろう、メインスタッフ、キャスト、それぞれ、アニメの世界では名の知れた存在である。そういう存在を呼んでのイベントなら行く人は多いだろう。しかし、そういうのなしに訪れる者がいるのか、というと……。そのラインで成功・失敗を分けるなら……と思うわけである。
私自身の地域振興における『ラグりん』評は、「成功ではない」と思っている。ただし、大失敗でもないと思っている。大失敗なら、ネタとしても使えない。
アニメ好きの人に
「おいらの故郷は、『ラグりん』で失敗したあそこです!」
「ああ、あそこね……(苦笑)」
と笑いが取れる程度の失敗作、という評価になっている今日この頃である。

異様に長い文章が出来てしまった(笑)

No.4108

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