(書評)記憶屋

著者:織守きょうや



大学生の遼一は、思いを寄せる先輩・杏子が飲み会などに殆ど参加せず、早く帰ることを不思議に思っていた。その理由は、かつての記憶から、夜道が怖いから。その帰宅に付き合う遼一だったが、治る気配はない。そんなとき、耳にしたのが忘れたい記憶を消してくれるという「記憶屋」という噂。そして、その記憶屋に会いに行く、という杏子は本当に記憶を喪い、遼一のことすら忘れてしまい……
第22回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作。
忘れたい記憶。多分、誰でもあることだと思う。冒頭にも書いた杏子なら、かつてのトラウマ。別に夜道だから即ち危険というわけではない。頭では分かっている。でも……。それを忘れられたなら、新たな一歩が歩める。次の行動が出来る。しかし、それは共に様々な弊害が。何よりも、何事にも様々な人が関わっている。そのエピソードも同時に……。記憶を喪うことは良いことなのか? それとも……? そんな物語を4編の連作短編形式で描いている(とは言え、厳密には短編集ではないが)
印象的なのは、2つ目のエピソードかな? 優秀な弁護士であるが、周囲とは一定の距離感を保ってきた青年。そんな彼は、最早、余命いくばくもない状態だった。普段の態度も、自分の死に深刻なダメージを受けないで欲しいから。しかし、そんな彼を強く思っている少女が一人居て……。よく、故人を思うのは美徳的な描き方をされることが多いけど、このエピソードのようなこともあるわけで、そう考えるとどちらが良いのか? ちょっぴり哀しく、でも優しいエピソードだからこそ、よりそんな雰囲気を強く感じる。
そんなエピソードを交えながら、記憶屋を探る遼一。そして、その記憶屋の抱えている苦しみ……。そういうあたりで纏め上げたのは上手い。
ただ……忘れられる、忘れられない……などの基準が曖昧で、その辺りがどうももやもやしたってのもあったりはする。

No.4118

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