(書評)女学生奇譚

著者:川瀬七緒



「この本を読んではいけない」 フリーライターの八坂は、奇妙な警告文の書かれた古書についての調査を、オカルト雑誌編集長から依頼される。古書を持ち込んだ女性・竹里あやめは、持っていたのは生き別れになった兄。そして、その兄は数ヶ月前から行方不明になっているという。その女性の言うことは本当か、嘘か? 八坂は、相棒であるカメラマン・篠宮、そして、あやめと共に謎を探るが……
まず、タイトルについてだけど、文字化けの可能性があるので現在の文字を使ったけど、表紙の「学」の字は旧字体のそれ。
著者はオカルトか、それとも、という『よろずのことに気をつけよ』でデビューし、その後、昆虫の生態から謎を解く『法医昆虫学』シリーズを刊行。どちらもいけるのか、とビックリ。こちらはデビュー作に近いテイスト。
物語は、冒頭に書いたように、奇妙な警告文が綴られた書籍の正体を探ることから開始。書籍に綴られているのは、女学生の日記と言うか、語りと言うか、そういう内容。戦前の女学校に通っており、やがて、その中でも憧れのお嬢様の屋敷の、屋敷牢で暮らすような形になった日々が綴られる。確かに、座敷牢で他の何人もの女学生との生活という時点で奇妙ではあるし、語り部たる佐也子の情緒不安定な語りも不安定さを煽っている。しかし、かといって、それに何かが仕込まれている感もない。
一方で、依頼人とも言うべき竹里あやめ。アメリカ在住である、ということを差し置いても、篠宮らとの間に壁を造り、そして、彼女もまた書の中の佐也子と同じく情緒不安定な傾向が見られる。しかも、明らかに何かを隠している。兄の失踪は本当なのか? 嘘なのか? 依頼人なのにどこまで信頼していいのか? というところまでもが現れる。しかも、確かに、八坂たちの周辺では奇妙な事件が……
書籍内の不安定さ。そして、現実の方の不安定さ。その両方の不安定さが組み合わさることで、何とも居心地が悪くなり、それ故に警告文は本物ではないか? と思えてくる。故に、先が気になる、という話の作り方は見事。『水底の棘』とか、身元不明遺体のタトゥーと、遺体についていた生物の一部と思われる棘、というヒントで遺体の正体を探るだけの話なのだけど、どんどん引き込まれたけど、本作もそれと似た傾向を持っていると思う。
もっとも、本作の場合、書籍についての謎は明らかになるものの、随分と大風呂敷を広げ、序章的なところで話が終わったような感もある。そのため、読み終わってスッキリとか、そういう感想にはならなかった。好みの問題だけど、個人的にはやりすぎ感の方が強かった。

No.4129

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