(書評)夢の猫 古道具屋皆塵堂
- 30, 2016 13:56
- や行、ら行、わ行の著者
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著者:輪渡颯介


相次いで両親がなくなり、借金だけ残されて天涯孤独となったおきみ。そんな彼女は、最近、後ろ足の先だけが白い黒猫の夢を見るように。そして、その夢と同じことが実際に起こるように……。借金を返すため、父の残した根付を売ろうとするものの、いつも、猫に邪魔されて売ることが出来ない。そんな中、曰くつきのものでも買い取る皆塵堂という古道具屋の存在を知って……(『猫の夢』)
シリーズ第7作。上に書いた粗筋を見ると、シリーズ初の女性主人公、という感じに思えるけど、おきみが主人公なのは1編目のみ。その後は、前作『影憑き』の主人公・円九郎が語り部を務めることの多い連作短編という趣。
その、おきみが主人公を務める1編目。父の残した借金は膨大。しかし、夢のとおりになることで、根付を売ることすら出来ない。買ってくれる、という皆塵堂は、何でも買う替わりに二束三文。こうなったら、あとは……
一見、冷たい反応のように見せてしっかりとおきみを救う手立てを考える伊平次。しかも、ただ救うだけじゃなくて、借金取りに曰くの品を引き取らせてしまう辺りが素晴らしい。しかも、2編目でさらなるオチを用意しているし。
『祟り婿』の主人公・連助と共に円九郎が化物屋敷に止まりこみにいく3編目。『祟り婿』のとき、伊平次らが頑張って連助が怪異の存在に気付かないように、とした努力の結果か、未だにその存在を知らず、怖いという人を馬鹿にする連助。『祟り婿』のときは、太一郎が珍しく激怒していたけど、円九郎がイラついたりとか相変わらず。ただ、近くに発生しているのに見事に気付かない、というのは『ばけたま長屋』の朔天に近いものを感じる。ただ、物言いはともかく、決して情がないわけではない、という連助の人間性ってのも再確認できたかな? そのほか、4編目では過去のある主人公についての因縁が明らかになるなど、結構、オールスター勢揃いという印象がある。
そして、表題作である5編目。作中で、いよいよ巳之介のところの猫に子供が……。12匹も生まれた猫を、預かってもらおうと巳之介が奔走する(そして、そこに円九郎も付き合わされる) ここでも過去に登場した人物が出てきたり、とかで、先に書いたオールスター感あり。完全に、里親探しで、ついでに、おきみの夢に出る猫を探す、というものなので、ひっくり返しとか、そういうものはない。ただ、地に足の着いた着地でこれはこれで満足感の多い読後感だった。
No.4130

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相次いで両親がなくなり、借金だけ残されて天涯孤独となったおきみ。そんな彼女は、最近、後ろ足の先だけが白い黒猫の夢を見るように。そして、その夢と同じことが実際に起こるように……。借金を返すため、父の残した根付を売ろうとするものの、いつも、猫に邪魔されて売ることが出来ない。そんな中、曰くつきのものでも買い取る皆塵堂という古道具屋の存在を知って……(『猫の夢』)
シリーズ第7作。上に書いた粗筋を見ると、シリーズ初の女性主人公、という感じに思えるけど、おきみが主人公なのは1編目のみ。その後は、前作『影憑き』の主人公・円九郎が語り部を務めることの多い連作短編という趣。
その、おきみが主人公を務める1編目。父の残した借金は膨大。しかし、夢のとおりになることで、根付を売ることすら出来ない。買ってくれる、という皆塵堂は、何でも買う替わりに二束三文。こうなったら、あとは……
一見、冷たい反応のように見せてしっかりとおきみを救う手立てを考える伊平次。しかも、ただ救うだけじゃなくて、借金取りに曰くの品を引き取らせてしまう辺りが素晴らしい。しかも、2編目でさらなるオチを用意しているし。
『祟り婿』の主人公・連助と共に円九郎が化物屋敷に止まりこみにいく3編目。『祟り婿』のとき、伊平次らが頑張って連助が怪異の存在に気付かないように、とした努力の結果か、未だにその存在を知らず、怖いという人を馬鹿にする連助。『祟り婿』のときは、太一郎が珍しく激怒していたけど、円九郎がイラついたりとか相変わらず。ただ、近くに発生しているのに見事に気付かない、というのは『ばけたま長屋』の朔天に近いものを感じる。ただ、物言いはともかく、決して情がないわけではない、という連助の人間性ってのも再確認できたかな? そのほか、4編目では過去のある主人公についての因縁が明らかになるなど、結構、オールスター勢揃いという印象がある。
そして、表題作である5編目。作中で、いよいよ巳之介のところの猫に子供が……。12匹も生まれた猫を、預かってもらおうと巳之介が奔走する(そして、そこに円九郎も付き合わされる) ここでも過去に登場した人物が出てきたり、とかで、先に書いたオールスター感あり。完全に、里親探しで、ついでに、おきみの夢に出る猫を探す、というものなので、ひっくり返しとか、そういうものはない。ただ、地に足の着いた着地でこれはこれで満足感の多い読後感だった。
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