(書評)ブラック・ドッグ

著者:葉真中顕



海の森公園で行われるECOフェスタ。遺棄動物の保護を訴える民間団体・ウィズと、悪評の絶えない大手ペット業者・アヌビスが共に参加する形になったイベントの開会セレモニーで事件は起こる。封鎖される建物。そして、そこに放たれたのは、巨大な黒い獣。過激思想で知られる動物愛護団体・DOGによるテロの中、建物の中に取り残された人々は……
介護問題を取り扱ったデビュー作『ロスト・ケア』。個人的には、エンタメ作品としてがメインだろうが、貧困問題なども取り込んでいた『絶叫』。著者の過去2作とは、異なる方向性へと舵を切ってきた作品だな、というのがまず読んでいて思ったこと。
物語は冒頭にも書いたように、巨大なイベント会場が閉鎖され、その中には、人を次々と襲う巨大な獣が……。その中で、逃げ惑い、脱出を試みる人々……というパニック小説、サスペンス小説といった趣の作品となっている。一応、ペット産業の問題とか、自閉症とかも組み入れられているのだけど、最終的にはファンタジー的なところに飛んでいることを考えても、表面的になぞっただけ、という印象が強い。
なので、これまでの作風を期待していると期待はずれ感が漂うんじゃないか、と思う。ついでに言うと、閉鎖された建物の構造とかがわかりづらいし、登場人物もかなり極端なキャラクターに設定されている。そもそも、キャラクターが多すぎて、何が何だか、と言う部分もある。
ただ、そうやって割り切って読むと、これはこれでアリだと思う。単行本で540頁弱という分量があり、基本的には建物の中での一幕という形であるにも関わらず、次々と変化していく事態もあってどんどん読み進めることができる。まぁ、片っ端から人が死んでいくので、「人死にすぎだろ!」とは思うけど、最初に書いたパニック小説であると考えれば、こういう作品は珍しくないし。
他の方の感想とかを見ていると、酷評も目立つし、その意見の中に「同感」と思うところもある。そういう欠点はありつつも、純粋に暇潰しと言うか、そういう形で読むなら十分に楽しめるクオリティはあると思う。

No.4140

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