(書評)狼と香辛料18 Spring Log

著者:支倉凍砂



ホロとロレンスが温泉地ニョッヒラに宿「狼と香辛料亭」を開いて十数年。ずっと働いていたコルが旅立ち、一人娘であるミューリまで彼についていってしまう、という人手不足の状況の中で……
という短編を集めたエピソード。
5年ぶり、か……。正直、綺麗に完結した作品を何年も経過した後、もう一度、新作出します! みたいなやり方は好きではない。好きではないのだけど……でも、買ってしまうファンの悔しさ。やっぱり、気になるのよ!
ということで、前作から十数年。行商人ではなく、宿の主人公となったロレンスと、その妻である賢狼ホロ。秘湯として多くの客が訪れる町での日常を切り取った形で描かれる。
閑散期を迎える時期に、何か客を呼べるイベントはないだろうか? そんなことを考える1編目『旅の余白』。どちらかと言うと、前巻からの中で、ホロとロレンスの関係がどうなっているのか? という近況報告みたいな印象が強いエピソード。なんていうか……娘がコルと一緒に出て行ってしまい、そんな娘から手紙を後生大事に繰り返して読むロレンス。しかも、決して「駆け落ち」とは認めようとしないロレンスに、いい加減にしろとツッコミを入れるホロ……。ある意味、父と娘ってこんな感じかも、と思いつつ、思い切りヘタレキャラになってない? という感じがする。……というか、最近のクースラ状態だよな(笑)
宿にやってきた男。金払いは良いが、湯を楽しむでもなく、何かを探している様子のその男の目的とは? という『黄金色の記憶』。歴史ある温泉街の持つもの。そして、その男が求めていたものの思わぬ正体。あとがきで、『マグダラで眠れ』より、こちら向きのネタがあったから、ということなのだけど、どちらでやっても良かった気がする。
そんなエピソードの中で語られた、山を挟んだ反対側に新たな温泉街が? というのが具体性を持って出てくる『狼と泥まみれの送り狼』。一番の分量を誇り、世界観とか、そういうのにも関わってくる。やりとりとか、そういうのは相変わらずなのだけど、山の向こう側に温泉街を作ろうとする理由。その権利などを巡っての思わぬ落とし穴。
結婚をし、子供を為したけど、でも、人間と神の間には……というのは避けて通れない問題でもある。本編の終盤で常に感じていた別れへの予感というのはやっぱり残っているわけだけど……それを知っていても、という関係性を改めて思い出した。もう1作、刊行予定があるらしいのだけど……その辺も描かれるのだろうか?
と言ったところで、最後のエピソードあるんだけど……、ミューリさん、恐ろしい子、としか思えない(笑) これは同時刊行の『新説』の方で実感することにしよう(笑)

No.4149

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