(書評)偶然屋

著者:七尾与史



司法試験に落ち、就職活動中の水氷里美は、「オフィス油炭」なる会社の求人広告を見つける。連絡をし、待ち合わせ場所として指定されたのはなぜかパチンコ屋。現れない待ち合わせ相手の替わりに、ひょんなことで知り合った店員・栄子と知り合い、彼女の相談に乗ることとなって……
なんか、イメージしていたものとは違ったなぁ……
「偶然屋」、それは普通の人が文字通り「偶然」と思ってしまうようなことを、実は演出によって仕上げる商売。例えば、気になる異性と「偶然」知り合う機会を得て……というような話があるけど、実は色々と仕込んでいて必然的に出会うように仕向ける……というようなことをする、というわけ。
粗筋を見る限り、そんな作品のように見えるし、事実、オフィス油炭の業務はそれ。ところが、読んでみると、この作品はその脇で起こっている凶悪事件、その黒幕との戦い、みたいなものに終始してしまって「あれ?」という感じ。
まぁ、いつもの著者の作品と同じくテンポがよく、キャラクターはしっかりと立っている。主人公の里美もさることながら、やたらと確率論で語りたがる油炭、子供だけど格闘技が抜群に強いクロエ。それぞれの掛け合い。そして、一種の連作短編的に、冒頭に書いた栄子が隣人から嫌がらせを受けているという相談。出会いを演出して欲しい、という男性の相手の秘密。それぞれちょっとブラックだけど、なるほど、とは思えた。
ただ、その背景に実は黒幕がいて、しかも、各章で挿入される過去の不穏なエピソードと繋がって……となったときに、結局、偶然屋の仕事と言うようなものの印象が薄れてしまったのだ。しかも、最終的に「続編を書きますよ」的な終わり方なのですっきりと解決って感じでもないし。
面白いのは確かなのだけど、このタイトルと、Amazonなどの粗筋だったので「なんか違う」感を覚えてしまったという何とも言えない読後感だった。

No.4150

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