(書評)聖女の毒杯 その可能性は考えた

著者:井上真偽



聖女伝説が伝わる村の結婚式。その最中、大盃を使っての回し飲みをした8人のうち、3人(+1匹)だけが毒殺される、という不可解な事件が発生した。参列した中国人美女のフーリンと、少年探偵・八ツ星聯はその事件の捜査に乗り出して……
その可能性はすでに考えた』の続編。
前作は4つのエピソードの連作短編形式だったのが、今回は、途中で一気に状況が変わるとはいえ、1つの事件を巡って仮説とその崩壊を繰り返す形の物語になっている。
第1章は、冒頭に書いた事件の概要、そして、その事件の解明へ。毒物を持っていた、ということで容疑者として疑われたのは、花嫁。関係者がそれぞれ、推理を披露する中、少年探偵の聯は、犯人はわからない。しかし、それぞれの推理は間違っている、と指摘し、1章は幕を閉じる。実は犯人は……という本人の心の中での告白を持って……
前作では「奇蹟の証明」ということで、ありとあらゆる人為的なトリックなどを否定していく、というのに対し、今回の話はまずは、花嫁の容疑を否定する、というところなので入りやすいかも。そして、その上で、「実は私は……」という展開になっての攻防戦へ……
第1章も面白いのだけど、個人的には第2章になってからの展開が好き。
犯人は自分。しかし、当然、それがバレてしまっては困る。警察に捕まるのだって困るけど、それ以上に犯人捜しをしているのは非合法集団。しかも、厄介なのは、容疑者候補には一般人の協力者もいる。ある程度の道筋が見えれば、拷問による尋問も辞さない。推理が的外れでも、協力者が拷問にかけられれば、そこで……。そんなときに現れたのは、奇蹟を実証しようとする探偵・上苙。彼は敵か味方か……
終わってみると、「なぜ、その可能性を考えていないんだ!」ってツッコミを入れたくなる真相なのだけど……
比較的シンプルな事件を、多重解決と、非合法集団を納得させねば、という形でスリリングな物語に仕上げたのは見事。面白かった。

No.4155

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