(書評)七日目は夏への扉

著者:にかいどう青



学生時代の恋人・森野の訃報。それは、「ま、ゆ……」そう遺して死ぬ、という夢を見た直後だった。自動車でガードレールを突き破っての転落死。自殺、事故……不可解な点はありつつも事件性なしと判断されたそれを調べ始める朱音だったが、その日常は崩れ始めて……
いつも通り、私は事前に粗筋とかを殆ど読まずに読み始めたのだけど、思わぬ展開だった。物語は、冒頭に書いたような形で進展。在宅で翻訳の仕事をする朱音。曜日感覚等がちょっとずれた彼女が、知ったかつての恋人の死。事件性はない、というが感じる違和感。夢の理由。そこで、調査を解した朱音だったが、そこへ悪意が……
ここまでは、いくつか違和感を覚える部分はありつつも普通のミステリ。しかし、その悪意の結果……で、判明するのは、まさかのタイムリープもの。
一週間の中の時間をランダムに飛び交う日々。通日後のことを知っているから、確認を急ぐ。その行動が、その後の不可解な違和感の正体に。しかし、だからこそ、森野の死、という事実を変えることが出来ていないことも実感させられる。そして、何よりも森野が死んだ火曜日にはいけないことがもどかしい……
何と言うか……この話、魅力的なのは主人公・朱音のキャラクターだろう。荒れた中学時代を過ごし、その中で父、姉、森野、沙希と言った周囲の人間とのやりとりを思い出す。サバサバしているようで、しかし、実のところ感傷的で情熱的。そんな彼女だからこそ、その苛立ちとか、そういうものに共感することが出来た。そんな、別れた相手だから、現役のような情熱があるわけではないし、でも、全くの赤の他人というわけでもない。そんな微妙な距離感。そして、時間軸が入れ替わってしまう奇妙な体験。そういうのが良いスパイスになっていると思う。
まぁ、森野が抱えたもの。キーパーソンとなる麻友香と言った辺りの抱えているものについて、もうちょっと掘り下げガあってもいいかな? とは思ったけれども、朱音の物語として考えればそれで良いのかもしれない。私はこの物語、好き。

No.4158

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