(書評)テロ

著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
翻訳:酒寄進一



2013年7月26日、ドイツ上空で飛行機がハイジャックされた。ハイジャックしたテロリストは、そのまま、サッカーの試合で盛り上がるスタジアムへと突っ込み、7万人の観客を犠牲にしようと企んでいた。そんな中、緊急発進した空軍少佐は、独断で飛行機を撃墜する。罪のない164人の乗客を犠牲に7万人を救った彼は英雄か、犯罪者か?
小説、かと思ったら、戯曲だった。
著者自身が弁護士、ということもあるんだけど、物語は裁判でのやりとり、と言う形で展開する。冒頭に書いたように、被告人は、多くの観客で賑わうスタジアムへと突っ込もうとする飛行機を乗客ごと撃墜した空軍兵。それを殺人犯として追求する検察官と、仕方がなかったとする弁護人&被告人……
確かに、少佐の行動は緊急避難のようにも思える。しかし、それを実行してよい、という法的根拠などはなく、また、どこからが緊急避難で、どこからが犯罪なのか、という線引きが出来ない。
こういうと何だが、飛行機の乗客は、少佐が撃墜せずとも数分後には死んでいた。ならば。それを早めることでより多くの人々が救えるなら仕方がないのではないか? しかし、少佐自身が認めるように、その乗客に彼の妻子がいたら……? また、その論を進めるなら、例えば、一人の人を殺し、その臓器などを移植を待つ患者に配るのは良いことなのか? なんていうところにも進展してしまう。
なんていうか、この中でのやりとり。自分が大学生の頃、一般教養科目として取っていた倫理学の授業でやった覚えがある(笑) ちなみに、私は一般教養科目の単位が足りなくて卒業できないかも、って状態だった(阿呆) これは、究極的には「こちらが絶対的に正しい」という判断の出来ない問題と言える。まぁ、私が学生だった頃は、9.11こそ起きていたものの、それ以外は……という状況。しかし、ISISによるテロなどが多く起こっている現在だと、その題材の持つリアリティというのがより強くなっているように思えてならない。
もっとも、どいつの法律とか、そういうところについての話とか、その辺りはサッパリわからないので、そのあたりの議論がやや読み飛ばし気味になったのは致し方ないところか……

No.4159

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COMMENT 2

苗坊  2016, 11. 06 [Sun] 13:50

こんにちは。
私も最初小説だと思って読み始めたら戯曲だったので驚きました^^;
読みづらいかなと思いましたがそんなこともなく、読み進められたのですがそれでも難しい部分は端折り気味でした…。
被告人は究極の選択を迫られ、またその時間も数分しかなくて、だからその判断は仕方がなかったのだとしても、それでもそれが正しかったのかと言えばはっきり正しかったとは言えないですし…。
読んでいる間も色々考えながら読みましたがやっぱり答えは出せなかったです。

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たこやき  2016, 11. 15 [Tue] 12:05

苗坊さんへ

これ、絶対に「正当がない」問題なんですよね。
そもそも、事情が事情なだけに、超法規的措置とかが採用されるようなケースもあるでしょうし、個人を守るのか、社会全体を守るのか、というのは常にせめぎあう話ですし……
それを個人の、限られた思考の中で行った際、それは正しかったのかどうか、という判断はさらにハードルをあげますし……

記事の方で書きましたけど、私が大学のときに受けた授業の課題そのものでした。
でも、だからこそ、道徳とかの教材に出来るんじゃないか? とも思います。

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