(書評)近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係

著者:久遠侑



母と二人で暮らす少年・坂本健一。彼の家で、遠い親戚の子であり少女・和泉里奈が暮らすことになった。里奈の控えめな性格、気遣い、女子校育ちの無防備さ……。人付き合いの苦手な健一だったが、次第に、里奈のことが気になって……
こういうと何だけど、この作品ほど「何もない」話も珍しいんじゃないだろうか?
……というと、「中身がない話」のように思えるかもしれない。そうではない。そうではなく、特別なことが全くないと思える圧倒的なリアリティがこの作品の凄さじゃないかと思う。
著者があとがきで書いているんだけど、主人公の少年の下が、女の子と同居することになって……というのは文字通り古典的な題材。それだけに、話の流れだって何度も見たことがある流れといえる。けれども、これまた著者があとがきで書いているように、ちょっとした会話、やりとり……そういうものを上手く描くことで圧倒的なリアリティが生み出されているのがわかる。
例えば、健一の家に、里奈が住むようになったこと、そのものについて。
勿論、親戚の子と一緒に暮らすようになった、ということ自体は別に恥ずかしいことでも何でもない。隠すような必要性なんてない。けれども、何となく隠したいと思ってしまう。それは、里奈を意識しているから、とか、そういうことではない。ただ、何となく恥ずかしいとか、そういう思いがあるから。自分自身、子供の頃、夏休みに従姉妹がしばらく来て……なんていうとき、あまり一緒にいるところとかを見られたくなかった、なんていうのがある、別に従姉妹に恋なんてしてない。けれども、一緒にいるのを見られたら、冷やかされそう、とかそういうことで隠していたわけだ。直接、書かれているわけではないけれど、健一の行動からそうなのだろうな……と思えてくる。このあたりの描き方は凄いと思う。
そして、そういう日常描写のリアリティがあるからこそ、終盤、三角関係に……という、現実的にはなかなかないだろう状況も自然に受け入れられるのだろう。ある意味、非日常的なシチュエーションへ……となっているのだけど違和感ないもの。主人公の兄が、大学院生なのに既にメディアなどで活躍している、とか、そういうあたりも結構、非日常なはずなのに、それも違和感ないし。
凄く地味。でも、その地味さの中にひきつける力がある、というのが最大の魅力。今後も楽しみ。

No.4160

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