(書評)幻影の手術室 天久鷹央の事件カルテ

著者:知念実希人



手術後のオペ室で起きた恐るべき事件。記録用の映像に残されていたのは、「見えない何か」と格闘しているかのよう二動き、やがて絶命していく麻酔医の姿だった。密室の手術室。中にいたのは全身麻酔で身動きの取れない患者のみ。警察は、その患者であり、天医会病院の研修医である鴻ノ池舞を容疑者としてマークする。舞を救うべく、鷹央は小鳥と共に調査を開始して……
シリーズ第6作で、長編作品としては2作目。
長編として2作目なのだけど、このシリーズ、長編の場合は、病気とか、医療とかの他にも小ネタ的な謎を散りばめることで話を進めている感がある。ただ、前作の長編『スフィアの死天使』の場合、正直なところ、あまりそのネタが、医療とかとリンクしていない感じがした。その点で言うと、今回は大分改善された、という風に思う。
例えば、小鳥が舞の入院している病院に入ってまず遭遇するのは幽霊騒動。比較的、早い段階で暴かれるそれは、トリックなど別に病とかとは無関係。しかし、狭い医療の世界、という人間関係がもたらしたもの。その意味ではしっかりとその世界とリンクしていると言える。
そして、そんな幽霊騒動を終えての事件。基礎研究を極めたい、と言っていた麻酔医は突如、大学院を辞めていた。それは一体、何故なのか? そして、その麻酔医に対する医療用麻薬横流し疑惑。それらが意味しているものは? 何より、なぜ、麻酔医は何かと格闘しているかのような動きをしていたのか?
一応の説明はあるけど、カメラワークの関係で決定的な部分が上手く映らなかった、というのは上手くいきすぎかな? と思うところはある。ただ、その一方で、どっちかと言うとこれまでトラブルメーカーだった舞の掘り下げとか、キャラクター部分での深みも増したし、今回の事件の背後にある問題と、舞の存在をリンクさせて「身近にあるからこそ」的なテーマも見えてくるような気がする。
面白かった。
と、同時に、これで体制が変わる部分があるので、次巻からはちょっと作品のカラーが変わる部分もあるのかな? と感じる。それも楽しみ。

No.4167

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


http://nijiirosekai.blog55.fc2.com/blog-entry-5761.html
スポンサーサイト

COMMENT 0

TRACKBACK 1

この記事へのトラックバック
  •  幻影の手術室 : 天久鷹央の事件カルテ
  • 幻影の手術室 : 天久鷹央の事件カルテ 作:知念 実希人 発行元(出版):新潮社 ≪あらすじ≫ 手術後のオペ室で起きた医師死亡事件。記録用のビデオに録画されていたのは、一人の麻酔医が「見えない誰か」と必死に格闘し、その末に絶命する場面だった。手術室は密室。容疑者は全身麻酔で身動きのとれない患者のみ。西東京市・清和総合病院で起きた不可能犯罪に対し、天才女医・天久鷹央...
  • 2016.10.13 (Thu) 22:25 | 刹那的虹色世界