(書評)戦場のコックたち

著者:深緑野分



1944年、合衆国軍のコックとなったティム。ヨーロッパ戦線へと渡った彼と仲間達の前に現れるは戦場とささやかな謎……
昨年の各種ミステリランキングで上位に入るなど話題になった書。その頃になって図書館に予約したら、手元に届いたのが秋になっていた(笑) 一応、形式としては連作長編と言った感じかな? 各章ごとに謎が発生し、その解答が示され、最終的にそれぞれがまとまって、という形なので。
まず、タイトルは『戦場のコックたち』とあるので、戦場での料理とかに纏わる話かメインかと思えば、あくまでも戦場での日々。そして、そこでの持ち場が料理という感じと言ったほうが良いと思う。
例えば、最初のエピソード。『ノルマンディー降下作戦』。文字通り、パラシュートを使ってノルマンディーへと降り立ったティムたち。ドイツ軍との戦いを繰り広げる中、地元の人々の屋敷を野戦病院として借り受けることが出来た。しかし、なぜか入ってはいけないという場所と、パラシュートの布が欲しいという。それは何のため? 言っては何だけど、余り料理が関係ない。そして、それ以上に謎が明かされた後の出来事……。ハッキリ言ってかなり後味が悪いまとめ方なのだが、それもまた戦場という感じがする。
多少、料理と関係するのは2編目の『軍隊は胃袋で行進する』。3トンもの補給物資が忽然と姿を消した。しかし、その物資は、栄養はあるかも知れないが、兵達からも「食べたくないほどマズい」と不評な粉末卵。なぜ、そんなものを? どうやって? とは言え、このエピソードは戦場における人間関係とか、そういうのも関係している。上官の命令は絶対。それは確かだけど、でも……結末がスッキリしないことも含めて、やっぱり舞台にあっていると思う。
半年以上前なのだけど、テレビで著者がインタビューに答えているのを見て、その中で、敢えて日本とかけ離れた部分だけで書いた、みたいなことを言っていたのだけど、それが大きな意味を持っているのが『戦いの終わり』だと思う。仲間だと思っていたある人物の真相。スパイを疑われる彼だが、そうではないと訴える。そして、その人物の経歴は……
良くも悪くも日本って、日本だけで完結した国であり、海外にも親戚が、とかそういうことは少ない。しかし、元々、アメリカは各国から移民が集まって出来た国。また、丁度、第2次大戦というのはヒトラーによるユダヤ人迫害などがあったわけだが、それだけ多くの人種、民族が入り乱れている地。勿論、血のしがらみもまたワールドワイドに。日本に住んでいるからこそわかりづらい。そんなテーマになっていると感じた。
古処誠二氏の作品とかのように日本を舞台にした戦争モノ。はたまた、真保裕一氏の『栄光なき凱旋』のようにアメリカを舞台にしても、日系人の物語とか、そういうのはこれまで読んできたけど、欧州系の人々の、その中での物語。これまで読んだ作品とはまた違った味わいを感じる。

No.4169

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