(書評)なくし物をお探しの方は二番線へ 鉄道員・夏目壮太の奮闘

著者:二宮敦人



蛍川鉄道・藤乃沢駅で働く鉄道員・夏目壮太は、周囲で起こる謎を鮮やかに解いてしまう「駅の名探偵」。そんな彼が、フランスからやってきた女性・クロエの世話をしたり、駅で寝泊りするホームレス・ヒゲヨシから知り合いの運転士を助けて欲しいと頼まれたり……
という連作短編集。シリーズ第2作。
今回は、「内からの目、外からの目」と言った辺りがテーマなのかな? と思う。
1編目は、壮太が、フランス人のクロエの世話をする話。祖父が褒めていた日本の電車を見たい、と言うのだが、地獄のような通勤列車。僅か数分の遅れでも誤る鉄道員。そして、それを含め病的にまで時間を守ることに気持ち悪さを感じるという。そんなとき、クロエが偽の駅員に切符を奪われたと訴えて……
よく、「日本の列車は正確で素晴らしい」と評価される。それは誇るべきことなのだけど、見方を変えれば、というのは当然にあるだろう。まして、エスカレーターにおいて止まっている人はこっち、歩く人は……みたいな暗黙のルールとかもある。郷に入れば郷に従え、ではあるんだけど、それが気持ち悪い、という味方もあっておかしくないよな……と。逆に、他の国のルールで考えるから……の真相にはハッとした。
2編目は、ホームレスのヒゲヨシが、深夜に走る貨物列車の運転士と仲良くなってという話。仕事に追われ、妻子を失ったヒゲヨシ。自殺をする勇気もなく、ただ淡々と日々を送りホームレスになった自分。そして、その運転士もまた、事故で妻子を失ったという。そして、言動からもしやと想い、GPSで位置情報を探ると……
こちらは完全に鉄道のトリビア的な感じ。普段、客が見ている時刻表とは別に、貨物を運ぶ貨物列車の時刻表が存在している。そして、同じことは……。名簿に存在しない運転士、とかは何となく予想がついたのだけど、ヒゲヨシの心理描写とかから凄く暖かい結末へ繋がるところがよかった。
そして、3編目。それまでのエピソードの途中に挟まれていた青年・純一の物語。希望だった食品会社に入ったものの、与えられた仕事はとにかく売れ、という営業職。明らかに粗雑と思えるそれを売ることも出来ず、上司からは叱責される日々。そして、同じ夢を持っていた直子とは最近、すれ違いだらけ……。一方、壮太は駅員から車掌にならないかと打診を受けていたが……
純一と直子がすれ違っていた理由は一応、説明されるけど、ちょっと後付くさい(笑)
ただ純一が自暴自棄になっていたのは、ある意味、「外の目」だけで業界を見ていたから、だろうし、壮太が車掌を拒むのも同じ。一方で、そんな状況を打破する2編目の運転士の言葉とか、そういうのも光る。内側の存在だから見えるもの、外側の存在だから分かるもの。そんな話を続けての結末、という意味でも上手い。
前作同様、謎解きと言っても、それ自体は小粒。でも、それに不満は全くない。

No.4170

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0