(書評)その10文字を、僕は忘れない

著者:持崎湯葉



幼い頃の事故のトラウマで一日に10文字しか喋れなくなってしまった宮崎菫。スケッチブックでの筆談のため、クラスでも浮いてしまっている彼女だが、その不器用でも懸命に会話を使用とする彼女に俺は惹かれていって……
「10文字」か……。ひらがな換算? 漢字換算?
ということはともかくとして、途中まではちょっと変わった障害を持つ少女と主人公のボーイミーツガールもの。なんつーか、決して目新しさはないかも知れないけど、滅茶苦茶に甘酸っぱい話で見ているこっちが恥ずかしくなる。特に、言うつもりはなかったのに思わず本音が出てしまって……とか、あのあたりのシーンは一周回ってありそう、と言う感じ。
が、そんな関係に皹を入れる一言。
「君は、ボランティア精神溢れる生徒だね」
自分は確かに宮崎に惹かれていった。しかし、それは、障害があっても健気な彼女の姿に……。しかし、それは本当に恋愛感情だけ、なのか? 障害があるから、が、きっかけになったのは事実。それは本当に? そして、そんな疑問を覚えたときに思わず発してしまった一言。
「カラオケとかどう?」
……不用意っちゃあ不用意なんだけど、皆でどこに遊びに行く? で、高校生くらいなら普通に選択肢になるものだし、しかも、常に100%、宮崎のことばかりを考えているわけじゃない。でも、存在を忘れてしまったことは? そして、その言葉で逃げてしまった宮崎を追うとき、軽かったとは言え、交通事故に遭ってしまって……
序盤の甘酸っぱいことこの上ないやりとり。後半の、ちょっとした一言、ちょっとした態度でそれが崩壊してしまう流れ。この辺りのリアリティが非常に良かった。最後の最後、ちょっと駆け足気味にまとめちゃったかな? と言うのは思うけど、なかなか満足感のある話だった。デビュー作シリーズと比べても完成度は高まっている。

No.4175

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