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(書評)新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙

著者:支倉凍砂



聖職者を志す青年・コルは、長年、世話になった恩人・ロレンスが営む湯屋・『狼と香辛料亭』から旅立つ。ウィンフィール王国の王子に誘われ、教会の不正を正すために。だが、そんなコルの荷物に、ロレンスの娘・ミューリが潜んでいて……
ということで、タイトルの通り、『狼と香辛料』シリーズのスピンオフというか、十数年後のコルを主人公とする新シリーズ。
まぁ、考えてみれば、もう10年も前になる『狼と香辛料』の第1巻を髣髴とさせるスタートの仕方。旅に出たコルの荷物にミューリが潜んでいて、っていうあたりもそうだし、何だかんだ言ってコルがミューリにやり込められるところ、さらには、終盤の危機で……というところも。
とは言え、やりこめられる、は、やりこめられる、でも、コルとミューリのそれは、ロレンスとホロのそれとはやっぱり異なる感じ。基本的には、真面目で(ある意味、極端に)常識人的なコルと、天真爛漫なミューリ。基本的にはコルが、ミューリを制する側なのだけど、良くも悪くも専門バカで人を疑ったりすることをしないコルを、変なところで耳年増だったりするミューリがしばしば驚かせて……という感じ。作中でも兄妹的な関係と出ているんだけど、まさにそんな感じかな? 駆け出しのロレンスと酸いも甘いも知ったホロというのとは一味違う雰囲気。どっちにしても、男がやり込められるわけだけど。
そして、話としては、いきなりコルに難題が降りかかってきたなぁ、という感じ。
聖職者になりたい、というコル。しかし、では、現状の教会が正しいと思えるか、と言えばそうではない。だからこそ、改革を目指すウィンフィール王国王子ハイランドに協力することに。行うは経典の俗語翻訳。しかし……
今回の話の大筋は宗教改革という世界史の中でも大きな出来事になるのだろう、と予測できる。しかし、ハイランドはともかく、果たしてコルにどこまでその意識があるのか……? 今回もその寸前までは行ったのだけど、今後、いざ血が流れる事態になったとき、どうするのか?
そして、今回のラストシーンでいきなり知ってしまったミューリの本心。聖職者となる、とすれば……。一応、現在の聖職者だって「姪」や「甥」がたくさんいる、なんていうのはあるけど、それじゃ、改革という方向性には進めないわけで……
元のシリーズ第1巻を髣髴とさせるスタートを切った本作。その中でしっかりと状況とかは説明されたわけだし、今後、どう進んでいくのか楽しみ。

No.4185

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