(書評)人ノ町

著者:詠坂雄二



旅人は訪ねゆく。不思議の町を。そして巡りあう。失われし世界の理と。かつての文明が滅び、各地に点在する町は、それぞれ独自の意趣を持って生きながらえてきた。そんな町で旅人が出会うものは……
という5編の物語を収録した連作短編集。
読みながらまず思ったのが、御伽噺というか、寓話というか、そんな感じだな、ということ。
物語は基本的に、各編、旅人が特徴的な町を訪れ、そこで起きる不可解な事件の真相を見る、というもの。ただ、こういう風に言うと事件が起きて、それはこういう方法で……的な流れを思い浮かべるのだけど、そんな感じではない。いや、謎解きはあるのだけど、謎を解いてスッキリというよりも、謎を解くことでより、その各々の町がどういう存在なのか、世界はどういう世界なのか、というところへと落とし込んでいるように感じる。
例えば1編目の『風ノ町』。絶えず強風が吹きすさぶこの町では、しばしば人が風に吹かれている(死んでいる)という。老人が風に吹かれているそこで起きていることとは……
常に強風が吹きすさぶその町は決して暮らしやすい町とは言えない。では、なぜ、その町で暮らしているのか? という町の歴史。そして、その中で、老人から風に吹かれていく理由とは……。決して、明るい話とは言えない。しかし、だからこそ町が何とか成り立っていたのだ、という歴史。そして、ある意味、今後の日本でも……とか、そういうのを思わずにはいられない。
1年を通して強い日差しが降り注ぐ『日ノ町』。そこには、白くて巨大な玉座と言われる建造物が建っている。それは一体、何のために建てられたのか……?
こちらは逆に、この世界は一体、どのようなものだったのか? について掘り下げられる。そして、こちらも日本で起きたある事故を髣髴とさせるものを見出すことが出来た。
最初にも書いたけど、著者らしい謎解き要素を交えつつも、世界観、雰囲気。そういうものを大事にして物語を構築した作品。そのように思えてならない。

No.4186

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