(書評)反社会品

著者:久坂部羊



全7編のエピソードを収録した短編集。
最近、著者の短編作品の刊行が相次いでいるのだけど、この作品はカラーとしては『嗤う名医』『芥川症』あたりに近いかな? と。医療とかの話は入っているのだけど、どちらかと言うとシニカルな結末の方を優先している、とでも言うか……
1編目の『人間の屑』。これは何と言うか……話として何だかよくわからなくなった。社会批評みたいなものから始まって、結局、今の語り部は……と。話がとめとなく広がっていく様は、ある意味、ウダウダと物事を考えているときの流れみたいな感じはするけど……ううん……
医療的な話は『無脳児はバラ色の夢を見るか?』。遺伝子検査により、お腹の中の子は「無脳児」と診断された母親。しかし、堕胎するのは殺人と同じだ、という人々と、いや、堕胎したほうが……という意見の間にもまれていく。そして、やがて「自分を殺して」という子供の声さえ聞こえるようになってしまう。そして、その結末は……。完璧はない。まさに、そんなことを皮肉った作品のように思える。
そのままなら……というのは『不義の子』。長年、妊娠しなかった妻が妊娠した。しかし、どうにも期間が合わない。相手は、一卵性双生児の弟? 中の悪かった双子の弟が妻に? そんな疑心暗鬼から、弟を調べ、しかし、だんだんとどちらでも良いじゃないか……という境地に陥っての結末。それさえなければ綺麗な話なのに(笑)
著者の作品でもしばしばある妙な性癖のキャラクターを描いた『のぞき穴』。幼い頃、トイレののぞき穴から女性を覗いた。そのときの記憶が忘れられず、そして、そこから産婦人科医となった彼は……。まあ、こういうこともやろうと思えばやれるのだけど、このエピソードに関しては、その変質的な主人公の思考を辿る、ということなのだろう。味わいとしては『嗤う名医』に収録された『愛ドクロ』みたいな感じかな?
でも、こうやって読んでいると、単純に「物語」としてはシンプルにまとまっている短編集の方がいいのかな? というのを思う。

No.4191

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