(書評)機龍警察 火宅

著者:月村了衛



『機龍警察』シリーズ初の短編集。全8編を収録。
これまでのシリーズでは、どちらかと言うと大規模なテロリストとの戦いとか、そういうのが多かったのだけど、短編集の今回はどちらかと言うとこじんまり。そして、龍機兵そのものが登場しないエピソードも多い。
それを象徴するのが、1編目の表題作。
警察官になり、捜査のノウハウを教えてくれた先輩・高木の見舞いに訪れた由起谷。他にも高木の「教え子」が集う中、話題になるのはその高木についての話。そこで由起谷が気付いたのは……。万年巡査部長と言われていた高木が、あるときを境に出世していく。その影にあったもの……。世界観はシリーズのものではあるのだけど、話そのものは普通の警察小説でも全く違和感のないもののように思える。
過去の作品でも少し触れられた傭兵・姿の過去が垣間見える『輪廻』。アフリカの反政府組織の幹部・デオプが入国した。監視を続ける特捜。そこで見えてくる少年兵の置かれた状況。なんか、私が丁度、毎週見ている『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の阿頼耶識システムとか、そういうのに共通するものを感じる。ただ、救いがないというのが何とも……
『輪廻』に続く、『済度』『雪娘』『沙弥』では、ライザ、ユーリ、由起谷の過去のエピソードが描かれる。
と、どちらかと言うと、龍機兵抜きの話が続く中、今後へ、というのも思わせるのが最後の『化生』。
不審死を遂げた経産省官僚。その死を探る中で浮かび上がってきたのは、龍機兵を初めとする「キモノ」開発に纏わるもの。作中でも出てくるけど、例えば、携帯電話なんかも最新機種が発売されるがすぐにそれは「当たり前の技術」になり、数年もすれば「遅れた技術」になってしまう。当然、それは「キモノ」にも。家電とか、携帯電話とかなら切磋琢磨してよくなることでマイナスはないが、兵器では? 沖津のとった強引とも言える方針。それは、龍機兵の優位性を守るため……。日進月歩の世界というのを描きつつ、同時に、今回はあまり示唆されていなかった「敵」を意識させる。締めに相応しいエピソードだと思う。

No.4195

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  •  機龍警察 火宅/月村 了衛
  • 月村了衛さんの「機龍警察 火宅」を読み終えました。これまで機龍警察シリーズは長編で刊行されてきましたが、今回は各所に発表された短編を集めたものでした。 「火宅」「焼相」「輪廻」「済度」「雪娘」「沙弥」「勤行」「化生」の8本の短編が収録されていました。1つ1つの分量は少ないのですが、その面白さは長編にも負けないものがありました。 「火宅」は、特捜の捜査員である由起谷が、新人時代に仕...
  • 2016.11.06 (Sun) 14:37 | 日々の記録