(書評)匿名交叉

著者:降田天



とあるミスから長年、担当してきた児童向け雑誌から外されてしまった編集者の楓。代わりに関わる事となったのは子供のコスプレ衣装製作の書籍。しかし、そこで紹介されたブロガー「ソラパパ」に偽善的なものを感じた彼女は、批判的なコメントを残してしまう。一方、その「ソラパパ」こと棚島は、仕事・家庭での苛立ちから、ブログで自分に付きまとってきた「色葉」を破滅に追い込もうとして……
著者のデビュー作『女王はかえらない』もそうだけど、嫌な空気、雰囲気というのを描くのはうまいなぁ。
文字通り、今回はネット上での攻防といった辺りが中心。テーマ的な部分では、『バリ3探偵 圏内ちゃん』シリーズ(七尾与志著)などと共通する。ただ、『バリ3探偵』が炎上事例に乗る側を描くなら、こちらは「炎上させる側」とでも言うべきか……
元々、火を放ったのは楓。ある意味、痛いところを突かれ、復讐に燃える棚橋。「その程度で」と思う楓。でも、楓の周辺では奇妙なことが起こり……
『バリ3探偵』でもそうなのだけど、WEB上での情報管理。別の名義での行動とは言え、変換のクセとか、双方で書かれている行動の共通点で特定し、そこに書かれた過去などを曝していく。技術的なことではないからこその、誰でもやろうと思えばできる個人情報の拡散。そして、ある種のその気楽さ。単なるストレス発散から始まる曝し行為。会社などとは違うところで出している本音だからこそ、いざ、問題になっても言い出せない。その辺りのリアリティ、怖さは流石。
ただ、そこに楓と母親の関係。棚橋の秘密。この辺りがまとまっていく後半は、デビュー作同様、出来すぎでは? と思うところもある。まぁ、ネット接続がPCで、という時代ではなく、スマホ、タブレットなどでも出来るようになったから、かつてと比べ作中のような事例が起こりやすくなったのは間違いないだろうけど、でも、ここまで気付かないものかなぁ? というのは思う。また、楓の過去についても、ちょっと……と思うところもあるし。
それでも、仕掛け人がいるとかで、最低限の整合性を用意しているので全く偶然に、というわけではないところは評価すべきなのだろう。
むしろ、本作は真相によるひっくり返しとかよりも、ネットがきっかけで追い詰められていく、その嫌な雰囲気を楽しむべき作品なのかもしれない。前作の感想でも、イヤミスの書き手として期待できる、みたいなことを書いていたのを思い出したし。

No.4197

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