(書評)ぼくたちが本当にシタかったこと

著者:白都くろの



この学校に入って数ヶ月。少ないとは言え、友人も出来、女の子ともちょっとは仲良くしている。周囲の女の子は魅力的で、少々戸惑うが、それは贅沢な悩みというものだろう。でも、だからこそ、僕は気になる。なぜならここは、成人映像専門学校、つまり、アダルトビデオ撮影の専門学校だから。それぞれ、したいことを持った中、僕は……
ライトノベルって何だろう? なんというか、所謂、エロ描写的なものを売りにしたライトノベル作品というのは色々と思いつく。例えば、アニメ化された『新妹魔王の契約者』とか、『魔装学園H×H』とか。ただ、これらってエロが売りとは言え、一応は物語中ではエロじゃない目的というのを設定して、その目的のためにエロ行為が必要という形になっているわけである。対して本作の場合、文字通り、主人公は「AV製作の学校に通う学生」というもの。つまり、何かの目的の為のエロ行為、ではなく、エロ行為そのものが作品中の学校の目的になっている。そのベクトルの違いが新鮮というか、よくやったわ、という感じである。
そして、そんな学校である為、実習とかバイトとして、AV撮影の現場に行ったり、エキストラとして参加したり、ということも行われる。で、かなり直接的な描写などもあり、そういう意味での生々しさはある意味、見事。
そして、その中での主人公の戸惑い。知り合いの、仲の良い女の子がAV女優になったら? 覚悟を決めている子もいる。ちゃんと目的があって、あえてAV製作に加わろうとしている子もいる。割り切って、製作に手を出そうという男友達もいる。じゃあ自分は? これといった目標があるわけでもなく、割り切っているわけでもなく、むしろ、知り合いが、となると嫌だとも思う。そして、当然、AVが商売ある以上、仲間意識とかよりも「売れる」形にせよ、というのも要求される。ある意味、外野の人間的な視点なので、部外者である読者として感情移入できるところは多くある。その辺りが最大の長所といえるのではないかと思う。
ただ……何というか……
色々な描写、周囲の面々の意思と主人公の違いを描くだけ描いただけで終わってしまった、とも言えると思う。つまり、問題提起をするだけして終わり、というか……。個人的に、ノンフィクションの書籍とかで、「こういう世界です」「こういう問題などがあります」みたいなものであれば別に気にしないのだけど、あくまでも小説とするなら、ある程度はまとめて欲しいと感じるのだ。
あと、設定的な話をすると、結局、この学校はどういうシステムなのかも良くわからなかったかな? というのがある。つまり、女優になりたい女の子も、撮影スタッフになりたい人間も同じ教室で、同じ授業を受けている。勿論、被写体になるにせよ、撮影技術などを学んだほうがよりよい映り方になる、とかはあるのだろうけど……どうにも、設定の練りこみも不足しているんじゃなかろうか?
部分部分での感情とか、そういう点では面白かったのだけど、1つの物語としては気になる個所がある作品という印象。

No.4199

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