(書評)ビッグデータ・コネクト

著者:藤井太洋



京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、世間を騒がせているITエンジニア誘拐事件への協力を命じられる。その協力者として選ばれたのは、2年前、多くのPCを遠隔操作できるようにしてしまうXPウィルスの製作者として逮捕されながら、証拠不十分で不起訴となった武岱。互いに不信感を抱きながらも、事件に当たるのだが……
日本SF大賞などを過去に受賞している著者。なので、勝手にサイバーSF的なものかと思っていたのだけど、かなり現実的な話だった。
物語は冒頭に書いたように、エンジニアの誘拐事件の捜査に当たることになったのは、2年前の事件で敵対する関係だった二人。武岱は不起訴にはなった。しかし、別に無実が証明されたわけではなく、証拠が不十分であったことと、優秀な弁護士の手腕によるもの。未だ、警察は武岱が黒幕と言う意識は強いし、また、この誘拐事件にもXPウィルスが関わっており、やはり武岱が……という意見は根強い。協力者、となっているが、実際には手近において尻尾を出すのを待つ、という意味合いもある。
そんな中で、事件のポイントなるのは個人情報の扱い。個人情報保護法という法律はあるが、しかし、それはあくまでも法律で設定された「個人情報」の扱い、拡散防止のための方法。「個人情報」には厳格な定義があり、それから外れれば「個人情報」に当たらない。民間業者はその間隙をつくし、法律を設定した側もまた……。民間業者ってことだと、CCCのTポイントカードとかを思い出すし、また、政府レベルでもマイナンバー制度とかがスタート。そういうタイミングでの問題提起というのは非常に大きい。
と、同時にSEたちが頑張ってしまう背景。もっと言うなら、フリーランスと言う状況の持つ不安定雇用の状況。そういうものも問題提起されている。この辺りは著者の経歴ゆえに、ということなのだろうな……
多少、専門用語とかが当たり前のように出てくるので、私のような素人には読みづらさもあるのだが、読み応えは十分。

No.4200

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