(書評)QJKJQ

著者:佐藤究



17歳の女子高生・市野亜李亜。猟奇殺人鬼一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を殺す。家族は、そんな秘密を抱えながらひっそりと暮らしている。そんなある日、兄がその部屋で何者かに惨殺され、直後、母も失踪した。亜李亜は、残った父へ疑いを向けるが……
第62回江戸川乱歩賞受賞作。
うーん……
一応、歴代の受賞作を全て読んでいる身としては、「乱歩賞らしくない」という感想を抱いた。ここ数年の受賞作の感想に「ちょっと方向性が変わったかな?」というようなことを書いたときは多い。それは、80年代後半~00年代くらいまでの「社会派モノ」ではなくなってきたことが多い。しかし、事件が起きて、その犯人を……という基本線は外していなかった。しかし、本作は……
冒頭に書いたように、殺人鬼一家で兄が密室で殺された、というところから物語が開始。となると、その密室を……となると思うのだけど、ネタバレになるけど、これ殆ど物語的には意味を成していない。
ある意味、この作品は、主人公である亜李亜の、自らは何なのかを巡る物語と言える。兄が殺され、母は失踪。犯人は父? 父が渡してくれた業界紙。そこに記された暗号と、その意味するもの。そして、そこから見え隠れしてくる奇妙な記憶……。それらが意味するものは?
従来の乱歩賞と趣をことにしているものの、文章そのものは読みやすくテンポも良い。心理学とか、脳神経科学なども駆使して、それらしく説明を進めていくあたりも良い。そういう意味では、公募新人賞の水準は満たしているのではないかと思う。勿論、そうは言っても、いくら主人公らの思考パターンなどを熟知しているとしても、ここまで黒幕がすべてを見通すのは不可能だろうし、上手く行き過ぎと思わないではない部分もあるが。
そして……選評で辻村深月氏が指摘しているように、本作は「新しい」と評するタイプの作品ではないと思う。辻村氏が指摘するように、このタイプの作品は、既に多く出ているから。あくまでも、「乱歩賞」として、というのが正しいだろう。
物語を語るとかなりネタバレ多数になってしまうので、あまり内容に触れづらいのだが、所謂、「社会派」とか、「本格モノ」とか、そういう路線ではなく、どちらかと言うと、あくまでも自己の世界、アイデンティティを巡る物語という系譜と言えるだろう。
……何気に、これが一番酷いネタバレなのかも、と書いていて思ったが気にしない(ぉぃ)

No.4203

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