(書評)小説の神様

著者:相沢沙呼



中学生で作家デビューを果たしたものの、発表された作品は酷評に晒され、売上も振るわない。「小説に力なんかないんだ」 物語をつむぐ意味を失った千谷一也の前に現れたのは、同い年の人気作家・小余綾詩凪。自分には「小説の神様」が見える、という詩凪と共同執筆することになって……
ごめん。読んでいて常に「どこでひっくり返すのかな?」ってことばかり頭の中をよぎっていた。著者は鮎川賞でデビューした作家。どこかにミステリ要素があるものだとばかり思っていた。そうしたら、そういう話じゃなかった。
なんていうか……話の流れ自体は凄く既視感のあるもの。かなりネタバレしながら書かせてもらう。
小説に力などない、と言う主人公が、人気作家である詩凪と合作で小説を執筆することに。当初は反発心しかなかったが、それでもスタンスに違いがあるとは言えども、次第に執筆は軌道に乗り始め、さらに、自分に小説の書き方などについてアドバイスして欲しいと言う後輩ともやりとりをするように。しかし、そんなときに自分の小説の売上などの状況を突きつけられどん底へ……。自暴自棄になり周囲にも。そんなとき、詩凪は……と言うことに気付いて……
こういうと何だけど、ボーイミーツガールものの王道そのものの展開。先に書いたように、私などは、著者をミステリ作家として見ているからひっくり返しとかを想像するので、詩凪が、って辺りも何か事情があるんだろう、というのも初めから想定していたし。そういう意味では想定内での流れだった、と言う風には言える。
ただ、まぁ……何と言うか、主人公が既に作家デビューをしている、というような作品は多いけど、これだけ逆境に立たされた状態で、というのは珍しい。そして、その焦り、悩みというものは、わかるような気がする。まぁ、自分の場合、コミケで同人誌を作っているだけだけど、一生懸命に書いたものが売れない。隣などは一杯売れているのに……なんていう焦りだったり、もっと売れ線のネタで行くべきなのか? とか(まぁ、障害競馬のサークルで売れ線って何や? って感じではあるが(笑)) 自分の場合はマイナーな同人誌だけど、ちゃんと書店などで扱われるものだったとしたら……
ただでさえ、書籍の売上は右肩下がりになっている。出版される書籍の数は鰻上り。ネットなどで、悪評もダイレクトに見えてしまう。主人公のネガティヴさが鬱陶しい、というのはあるんだけど(Amazonとかの評を見ていると、主人公が鬱陶しいから嫌、とか、主人公の薄っぺらい分析が嫌、という理由で低い評価をしている人がいる)……ただ、そういう環境が出来つつあるから、という現状を示すアイテムとして機能している、ともいえるんじゃないかと思う。
先に書いたように、ちょっと展開が王道過ぎて先が読める分、終盤のまとめ方に工夫とかが欲しかった、とは思うものの、どんどん苦しい状況に入りつつある出版業界、作家と言う状況をダイレクトに示しつつ、青春モノとしてしっかりと纏め上げたのは評価されることじゃないかと思う。

No.4206

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