(書評)土曜はカフェ・チボリで

著者:内山純



児童書を扱う出版社に勤務する香衣は、あるきっかけで土曜日だけにしか営業しないカフェ・チボリを知り、その常連となる。美味しい料理とあたたかい雰囲気の店では、常連客たちがその身の回りでおきた奇妙ななぞについて語り始めて……
ということで、各編、アルデルセン童話をモチーフにしての連作短編集。
これが著者の単行本としては2作目になるのだけど、作品の雰囲気ではデビュー作である『Bハナブサへようこそ』とそっくり。カフェか、ビリヤード店か、という違いはあるものの、常連客がいて、その常連客が語る謎を皆であーでもない、こーでもない、と話し合い、きっとこうなのだろうと謎を解く形なので。っていうか、『Bハナブサ』の主人公・中央の名前とかも出てきたしね。
謎のタイプとしては「日常の謎」にカテゴライズできると思う。ギリギリ……という気もするけど。
例えば、1編目の『マッチ擦りの少女』。消えた町会費と、その場で何かを燃やしていた少女。しかし、現金は翌日、戻ってきて? 少女が町会費を盗んだのか? そして、何を燃やしたのか? 疑いたくはないけど、でも……。『マッチ売りの少女』が、火をつけることで暖を取って……というのと同じように、その少女が燃やした理由は。結構、色々とうまく組み合いすぎとは言え、「犯罪か?」というところからすべてが丸く収まる結末は暖かあった。
逆に、2編目の『きれいなあひるの子』は、日常の謎から……という話。趣味で作ったカップが気に入られ、一泊旅行へ招待された。ところが、一泊を挟んで、招待者の態度が。自分は一体、何をしてしまったのか? それだけだと日常の謎的なところなのだけど、骨董品とか、そういうものを巡る薀蓄により、実は犯罪行為が行われようとしていたのでは? というところへと向かっていく様が印象的。しかも、この編では、「恐らく」と思いつつも何もできない後味の悪さも。
そして、そんなエピソードの諸々が繋がっていく『カイと雪の女王』。チボリ、常連客に対して起こる嫌がらせ。そして、その首謀者の目的……。根本的に価値観が異なっている、ってことなんだけど、流石にこれは起こるよなぁ……。ただ、これまでどちらかと言うと、謎を解き、周囲をまとめる役割だったレンが怒り、それを周囲が……という流れ。常連客たちの絆が感じられ、その上で、レンと伯父の関係を暖かく纏め上げた読後感は凄くよかった。
……っていうか、ここまで書いた後、書店のサイトとかをみたら紹介文で高校生のレンがオーナーと書かれていたのでネタバレOKとして書くのだけど……
金持ちの家で生まれ育ち、成績も優秀。そして、チボリの食器やらなにやらは超高級品。……自分が客だったら、傷とかつけたらいくら弁償させられるんだろう? と思えてくつろげない気がする(笑)

No.4210

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