(書評)シンザンの騎手 天才ジョッキー栗田勝の生涯

著者:小山美千代



1964年、日本競馬史上2頭目のクラシック3冠馬となったシンザン。その最強馬の才能を最初に見出し、主戦であった栗田勝。その生涯について綴ったノンフィクション。
自分自身が競馬を見始めて20数年。歴代の三冠馬の名前は当然のように頭に入っているし、管理していた調教師とかもある程度は頭に入っている。そして、シンザンの主戦騎手が栗田勝である、ということも当然に知っている。
けれども、考えてみると栗田勝という騎手について語られる機会と言うのは非常に少ないと感じる。例えば、『消えた天才騎手』(島田明宏著)で扱われた前田長吉のように戦前の存在で、競馬主催者も変遷してしまった、というのならば資料などがないのも理解できる。しかし、50年前とは言え、家族・関係者に存命者も多いこの人物についてあまり語られていない、というのは不思議である。
さて、そんな本書であるが、タイトルで書かれているように、シンザンを巡ってのエピソードを中心に、競馬社会に入るまで、そして、著者が取材した相手が息子である故・栗田伸一氏、妻である栗田英子氏を中心にしているため、騎乗論とかよりも、その人となりを描くことに多くの頁を費やしている。
栗田勝というと、酒。飲酒が原因でレースをすっぽかして、シンザンの引退レースに乗れなかったとか、断片としては知っているのだけど、本書を読んでいるとそんな彼の人物像が凄く頭に浮かんでくる。普段は物静かであるが、酒を飲むと口が軽くなる。皆でワイワイと飲む、というよりも一人で晩酌をするのを楽しむ。一方で、家族思いではあるが、何の相談もなく旅行を計画してしまうとか、勝手な部分もである。そして、息子の伸一と二人で泥酔した挙句、金を使い果たして幼い伸一が京都の母に相談した……なんていうエピソードを見ると、自分も酔いつぶれて……とかを思い出してしまい、思わず苦笑い。
栗田勝は、私が生まれる前に、47歳の若さで逝去し、今から知ろうとすると本当に記録とかから、になる。しかし、当時の競馬の環境とかもあるのだけど、一つの基準である1000勝は達成できず、記録の面で表に出るケースは少ない。しかし、本書を読んだことで、栗田勝という騎手を、一人の人間として具体的に思い浮かべることが出来た。

No.4212

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