(書評)サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう

著者:秀章



巌窟王によって隠された財宝「七氏族軍資」を巡り、旅団が鎬を削る冒険者時代。「軍資に最も近い」と言われる旅団の白魔道士ユーリたちは、迷宮の奥深くに封印されていた美女・クリスティーヌを救出する。しかし、彼女の参加によって旅団は……
タイトル長ぇ(笑)
サークルクラッシャー、大学などのサークルに参加し、自覚しているか、無自覚か、は別にして主に男女関係を乱して、文字通りサークルを崩壊へとみちびいてしまう存在。そんなものを題材にしているわけだから現代劇かと思いきや……まさかの異世界モノ。
私自身は著者の作品は『脱兎リベンジ』、『GランDKとダーティ・フェスタ』に続いて3作目。どちらも、現代劇。そして、学校と言う環境の、私はこの言葉、余り好きじゃないのだけど所謂「スクール・カースト」の底辺にいるような主人公が、そこから這い上がって……という話。序盤に暗いところを持ってきて、だんだんと……というところに行く中で物語に疾走感が出て行くというのが、私は著者の持ち味じゃないかなと考えている。
「軍資に最も近い」というように、ユーリのいる旅団は超一流の実力者揃い。余りに強くて怪我とかしないので、ユーリはやることがない(=役立たず)、そして、白魔法を使うためには女性と結ばれるわけにはいかず童貞でバカにされている、というのは過去作っぽいポジションではある。ただ、別にユーリはそこから這い上がろうとか、そういうのはなくて、一種の傍観者的な立場。周囲の好意に、文字通り、無自覚に好意で応えてしまうクリスティーヌを自らも惹かれかけながらも、上の状況で一歩ひいた形で状況を把握する、という形で展開していく。
先に、だんだんと物語に疾走感が出て行くのが持ち味、とかいたわけだけど、本作もそれはある。旅団の男性陣がクリスティーヌに惹かれ、関係を持ち、ギクシャクとしていく。そして、その中でそれまで周囲に言っていた格好つけというメッキがはがれていく。それぞれのポンコツな部分が見えて、それでも……となっていく。上に向かって、という過去作とはベクトルが異なるものの、どんどんおかしな方向へ加速度的に進んでいくさまは読ませる。そして、最終的にユーリが取る、一歩ひいた立場だからこその逆転劇というのもよく考えられていて上手い。そういう点で言うと、上手いし、楽しかった。
ただ……ちょっと時間を置いて考えた場合に、この話の設定は「ご都合主義的」と感じる人も出るんじゃなかろうか? とも思えてくる。というのは、人間関係が……云々というのは、大学のサークルとかでも当然に出来ること。しかも、タイトルに「既読スルー」とあるように、スマホとLINE的な道具もある。小道具とかは、完全に現代のそれ。しかも、序盤、クリスティーヌを助ける辺りまでは冒険しているけど、その後は別に冒険していないで、サークル内のゴタゴタがメインに。つまり、だんだんとおかしくなっていくところは、異世界要素なしでもOKというわけ。ところが、最終的な解決方法は異世界要素がなければ無理。
つまり、上手く考えている、というのではなくて、物語を回すために都合のよい世界観設定をしているだけでは? とも思えてくるわけ。どちらとして評価するのかは、多分、人それぞれなのだろうけど。
読んでいる最中は非常に楽しかったのだけど、ふとそんなことを考えたらモヤモヤとした、というのが感想。

No.4216

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0