(書評)アンティーク贋作堂 想い出は偽物の中に

著者:大平しおり



長年、行方不明だった母の遺体が発見された。その葬儀の日、彩の前に現れたのは、これまた長年、音信不通であった兄の灰。兄が開店するアンティーク店を手伝うこととなった彩だったが、その店の名は「贋作堂」。偽者を愛する兄の気持ちを理解できない彩だったが……
という連作短編集。
うーん……。正直なところ、物語がどこを向いているのかがよくわからず、イマイチ入り込めないままに終わってしまった感じ。
まず、読んでいて良くわからないのは、そもそも灰はどういう商売をしているのか? ということ。灰は鑑定の技術だけでなく、贋作を作る技術とかもあるらしいのだけど、贋作を作り人を騙して商売をしているわけではないらしい。かといって、「レプリカです」と言って商売をしている、というわけでもない。その上で、本物については商売を断ってしまう。しかも、「○○作の宝飾品」ではなかったけど、使われている宝石は本物だからダメ、とか、彩じゃないけど、「屁理屈」レベルなので、結局、何がしたいのだ? という感じになってしまう。
まぁ、偽者を巡る物語。人を騙そう、という意図ではなく、純粋に別のものなのに、時間の経過の中で間違った曰くがついて語られていく。そして、その曰くを信じ、それを所有する人。そんな物語のそれぞれは好き。確かに偽者ではあるが、それを「マリー・アントワネットの首飾り」と信じた卯月先生とか、はたまた、文字通り人をはめるためだけに作られた贋作の「嫌らしさ」の3話目とか、小さな要素はよかったと思う。
思うけど……結局、灰の態度、屁理屈が面倒くさいレベルになっているうえに、結局のところ、それぞれの物語が灰と彩、その母……という家族内の部分だけで終始してしまっているために商売である必然性とか、そういう部分が弱くなり、持ち込んだ客の存在感とかもなくなってしまったのだと思う。
もっと素直に、持ち込んだ客、品物についての話だけで展開させたほうが読みやすかったんじゃないかな?

No.4217

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