(書評)碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート

著者:福田和代



航空自衛隊中央音楽隊でアルトサックスを担当する鳴瀬佳音。ちょっとドジだけど憎めない彼女の周囲では、数々の不思議な出来事が起こる。失われた楽譜、楽器のパーツ泥棒、絵葉書の秘密……。佳音の周辺の謎を扱った連作短編集。5編+α収録。
大矢博子氏による解説の1行目じゃないけど、あれ? これ、福田さんの作品? って感じ。
著者の自衛隊を題材にした作品というと、『迎撃せよ!』とかが思い浮かぶ。それ以外でも、どちらかと言うとサスペンスの強い話、もしくは、謀略小説などというイメージが強い。が、本作は完全に「日常の謎」ミステリとなっている。そして、物語としては、名探偵が謎を解く、というよりも、何となくわかる、という感じの話が多い印象。
例えば、1編目『ギルガメッシュ交響曲』。ふれあい音楽会で演奏することになった曲の楽譜が消えた。前に演奏したとき、使ったのは佳音の前任者。隊のベテランと同期、同年齢のはずなのに、なぜかその人物は定年退職したという。それはなぜなのか?
ある意味、自衛隊という組織のルールとでも言うべきものを理解していれば解ける謎の気がする。ただ、自衛隊の中でも、音楽隊というのが他とは違うのだ、とか、そういうことを十分に印象付ける導入編だと思う。
音楽、部活動というものをめぐるのが『文明開化の鐘』。中学生たちに演奏指導に向かった佳音たち。やけに態度のでかい中学生がいるのだが、彼の中学の吹奏楽部では、楽器のパーツ盗難が相次いでいるという。それはなぜなのか?
勿論、プロの楽団とか、そういうものでもメンバーの移り変わり、というのは常に起こる。しかし、学校というのはその変化が激しい。前年は優れていても、今年は……。強い思い入れがあるからこその、残酷な真実。そこを防ぐための苦肉の策……
関係者の一部が最初から解答を知っている、とか、そういうものも多いので、謎解きの爽快感は薄いかもしれないけど、気楽に手にとって楽しめる作品。そういうものには十分に仕上がっていると思う。

No.4235

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