(書評)潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官

著者:川瀬七緒



小笠原で発見されたミイラ化した女性の遺体。解剖医は自殺と判断したものの、マスコミ、死亡した女性の親は警察の不手際だと騒ぎ出す。派遣された岩楯、そして、赤堀は、捜査を開始するのだが……
シリーズ第5作。
毎回、高いクオリティを維持しているこのシリーズ。今回も面白かった。
死体の状況から首吊りと思われる遺体。しかし、昆虫学の見地から言うと、ウジなどによって食われた部分が少なすぎるなど、明らかにおかしな状態。そもそも、この死体そのものが、放し飼い状態の犬がどこからか銜えてきた、というものでどこで死亡したのかもわからない。一体、どこで死亡したのか? そんな中、赤堀が見つけたもうひとつのヒントは、日本にはいないはずの外来種のアリ……
個人的にシリーズ最大の傑作は『水底の棘』なのだけど、今作も中盤までどこに死体があったのか? すらわからない状況ながら、グイグイと読ませる。そして、中盤、その遺体のあった場所が判明、しかも、新たな事件? という状況になってもなお、まだまだ、事件なのか自殺なのかわからない。次々と事件が転がって、というわけではないのに、赤堀らをはじめるキャラクターのやりとりの楽しさと、昆虫などに関する薀蓄が巧く絡み合い全くあきされない辺りはいつもどおり。今回、新登場の刑事・兵藤は潔癖症(気味)。赤堀との愛称を考えれば、それだけで笑いがこみ上げてくるでしょ? 何しろ、ウジ、ウジ、ウジの話だからね。
今回。真相に関して民俗学的な話が絡む辺りは、著者のデビュー作『よろずのことに気をつけよ』を髣髴とさせる。ただ、ちょっと終盤がそこまでに比べて急展開かな? と思うところはあった。ただ、それが大きな失点である、とは言いがたいくらいの瑕疵だとしか思えないが。
とにかく、今回も高いレベルで安定していて面白かった。
っていうか、岩楯刑事。今回の作中でどれだけの距離を移動したんだろう? 小笠原と都内を何往復もしているぞ……

No.4237

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