(書評)嘘ですけど、なにか?

著者:木内一裕



担当する作家の我侭などに振り回されている編集者の水嶋亜季は、ひょんなことで高級官僚だという待田隆介と出会う。初対面ながら隆介と打ち解けた亜季だったが、新幹線テロで騒がしい中、隆介が誰かに「西本さやかを殺せ」と命じている姿を目撃してしまう。果たして、その女性が殺された、というニュースを目にした亜季は、隆介が犯人だと警察へ通報するのだが……
まず、本編のないように関係のないところから……。この作品の表紙、これ、実は著者の描いたイラストなのだという。いや、著者は漫画家として活躍していた人だから表紙イラストを描いたとしてもそれ自体は不思議でも何でもない。でも……これ? イラストに見える? 手元にあってもモデルさんの写真か何かとばかり……
てなところからの本作の感想。正直なところ、読んでいてまず思ったのは、予想していた話とは違うなぁ、ということ。表紙に描かれた女性、そして、タイトルから嘘をつくのも厭わない悪女が周囲を欺いて……というような話を予想。ところが、本作は、というと亜季と隆介。双方の攻防戦という形で展開する。
いや、確かに亜季は決して品行方正とは言いがたい。場合によっては平気で嘘もつく。でも、いわゆる詐欺師的なもの、というよりも、その場を収める一種の方便としての使い方。多少、エゴとかもあるけど、ごくごく普通の女性といえると思う。だからこそ、隆介を告発したわけでもある。ところが、隆介は実は警察官僚。そして、その力により逮捕されてしまう。ここから、両者の対決が開始される。
こういうと何だけど、敵としての隆介はかなりショボい(笑) 殺人の実行犯たる叔父が「エリートは打たれ弱い」と評するようにちょっとしたことであわててボロを出す。そもそも亜季を逮捕したこと自体がボロそのもの。権力を用いて、強引にでも亜季を捕まえようとする隆介だからこその滑稽さ、という感じになっている。ただ、そうは言っても隆介の人間くささ、というのも感じられる。完全なる冤罪で国家権力に追われる、というような話とは違うのだけど、これはこれでひとつの作品としてアリ。
過去に詠んだ著者の作品と同様、リーダビリティは非常に高く、どんどん読み進められる。思っていたような話ではなかったが、しかし、これはこれで楽しく読むことが出来た。

No.4241

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0