(書評)タマゴマジック

著者:恩田陸



空から謎の卵が降り、赤い犬が宙に浮かぶ。東北の都市・S市で起きた奇妙な事件……
これは一体……という困惑が何よりも先にたった。
巻末にある初出を見ると、1999年、2002年~03年、2011年~12年、書き下ろし、という形になっており、結構、幅広い時間を経て発表された作品を収録した短編集、という感じがする。しかし、実際に読んでみると、02年~03年のものと11年~12年のものが交互に掲載されており、話としてもそれぞれに関係があるような、関係がないような、という感じで、何か長編になっているようにも思える。
冒頭に書かれた第1章とも言うべき『魔術師1999』。拡大を続けるS市。その中で地域により大きく差異が出来、一方で、さまざまな都市伝説が生まれている。それは……。『魔術師1999』自体は、それでまとまっているのだけど、その根底にある、人間ではなく、街、土地、そういうものに超人的な意思があるのではないか? というような話は結構、面白い視点。
そして、その上での『ブリキの卵/この世は少し不思議』。『この世は~』は本当にエッセイ。一方で、『ブリキの卵』は、S市で奇妙な卵が発見され、ある日、それは割れて、殻も消えてしまった、という話。つかみどころのない『ブリキ~』と、『この世は~』の組み合わせで不可思議な印象を受ける。いや、こちらもひとつの真相が出ているのだけど、きっかけがあるとはいえ、それが都市伝説へ、という流れは印象的だった。
そして、書き下ろしの『魔術師2016』。実際の歴史と同じく、東日本大震災というものが起こり、S市も大きな被害を受けた。そんな中でのちょっとした、しかし、不可思議な出来事……
結局、はっきりとした結末が何だったのか? とか、そういうのが曖昧なままなのは著者らしい。その上でこの構成と、土地の意思みたいな題材。こうやって考えてみると『EPITAPF東京』っぽい、ということに気づいた。

No.4245

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