(書評)一〇一教室

著者:似鳥鶏



カリスマ教育者・松田美昭がつくった全寮制の学校・私立共心学園。高い進学実績に加え、ひきこもりや反抗的な子供も大きく変わると評判の学校だ。しかし、その生徒が心臓麻痺で死亡した。生徒の従兄弟である拓也は、同じく従姉妹の沙雪とともに、学園について調べ始めるが……
あとがきがない! 注釈もない! 本当に著者の作品か!?
いや、いきなり無茶苦茶なところから始まったのだけど、実際問題として、これまでの作品とは趣が異なる。社会問題を扱う、なんていうのは、過去の作品にもあったのだけど、それでも謎があって、それを解明して、という話。ソレに対して、本作の場合、一応、拓也たちが学園のことを調べるのだけど、実際に通っている生徒の視点があり、自分たちはこういう学校です、とインタビューに応じる学園長の言葉があって、で実態が得綴られていく。謎解きというよりも、学園の異常な状況を綴った、ある意味、ノンフィクション作品のような味わい。
っていうか、この作品、読んでいていくつもの「モデル」らしきものが浮かんで仕方がなかった。
全寮制で全てが監視されていて、という学校というと愛知県にあるK陽学園とか思い浮かぶし、学園長は、某ブラック居酒屋社長で、なぜか国会議員をやっているW氏をが思い浮かぶし、体罰云々は作中にも出てくるT塚ヨットスクールや、塾生を殺したAメンタルスクールや、塾生から監禁で訴えられたりしたO田塾を。んでもって、学園町の語る昔は良かったという与太話はJ民党の自称・教育系議員のソレそっくり(例えば、犯罪者先生ことY家議員とか、ああいうのね) そういうのをまとめて作り上げた舞台が、この作品の学校・共心学園なんじゃないかと思えてならない(てか、「狂信」とかけているのだろうか?)
ともかく、この作品のリアリティはイジメ研究とか、そういうところでもさまざまに指摘されているものを踏襲しているから、だろう。学部の目が入らない閉鎖的な空間。その中で、権力者とそうでないもの、という位置づけがされている。そして、ある意味、親という「顧客」の心をつかむやり方。結果、親も共犯者として、この犯罪行為に手を貸してしまう。そのメカニズムは現実にあるものそのもので、それをきっちりとシミュレートしているからこその嫌な感覚が醸し出されているのだと思う。
そして、この後味の悪さ。
拓也や、生徒である小川らの行動により、その実態が明るみに出た学園。しかし……
これまた、T塚ヨットスクールとかの現状を見ていると……という感じ。一応、ひっくり返し的な要素はあるけど、どちらかというと、リアルなシミュレーション小説を読んだ、という印象だけが残る。

No.4247

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COMMENT 2

苗坊  2016, 12. 30 [Fri] 14:31

こんにちは。
確かに注釈もないしあとがきもないし、似鳥さんの作品だということを忘れかけながら読んでました。
学校と言うよりは軍隊や監獄が思い浮かぶような感じで読んでいてただただ不快でした。
小川君の行く末にはハラハラしましたが、問題はそこではなかったんですね。
あのインタビューのカラクリが分かった時のもやもや感が酷かったです^^;

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たこやき  2017, 01. 02 [Mon] 11:45

苗坊さんへ

あけましておめでとうございます。
……と祝うには嫌な感じの作品ですね(^^;)

>あのインタビューのカラクリが分かった時のもやもや感が酷かったです^^;

ここに尽きると思います。
本文の記事でも書きましたけど、モデルと思われるものはいくつもあって、同じような形で現在でも、いや、逆にかえって熱狂的な支持者が、っていうのがあるんですよね。それも含めて、シミュレーション小説という印象を強くしました。

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