(書評)やり残した、さよならの宿題

著者:小川晴央



夏休みの終わりにこの街を離れてしまう鈴。小学生である青斗は、彼女のために最高の夏休みをプレゼントしようと決意していた。そんな青斗らの前に現れたのは、何でも見通す不思議な力を持っている美大生の一花お姉さん。街の絵を描くために来た、という一花お姉さんの手伝いをしながら過ごす、最初で最後の夏休みが始まった。
発売日に購入し、3か月以上も積んでしまった。思い切り季節外れで読む羽目に(苦笑)
そんな物語は……著者のことだから、絶対に何か仕掛けてくる、というのはわかっていて、「この辺りかな?」とか、そういうのも予想していた。でも、それでもいい話だったな、という評価が揺るがないから恐れ入る。
物語の前提として、この街には、神様であるトキコ様がやり直したい過去に「時渡り」させてくれる、という伝説がある。一方で、最近、街では不審火騒ぎが連続で起きる、という物騒な事件も起こっている。そのような中で……
ページのほとんどは、青斗、鈴、そして、一花の何気ない時間が描かれる。出会った一花が住み込みで働く旅館に現れたクレーマーに対し、格好良くそれを対処する一花。男の子の、ある意味、プライドの掛け合いとしての野球対決。一花が落としてしまった絵筆を拾おうとしての青斗と鈴の奮闘。そして、祭の日……。この手の作品として、決して目新しい描写ではないけど、でも、小学生らしい生き生きとした時間が良い。
そして、そんな物語が急展開する終盤……
鈴に「最高の夏休みを」という青斗の決意。意味ありげなタイトルが意味していたものが明らかになったときに、すげぇ、と思い、さらに……
最初の仕掛けだけでも、十分に見事だったのだけど、それがさらにもう一丁。最初のところが、うまいこと目くらましにされていたことに気づいた時の「やられた」感に完全にKOされた。
作品の分量もそれほど多いわけではなく、手軽に読める作品。でも、その中に、十二分な満足感。面白かった。

No.4256


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