(書評)ジェリーフィッシュは凍らない

著者:市川憂人



真空気嚢という特殊な技術を用いて開発され、航空機の在り方を一変させた小型飛行船・ジェリーフィッシュ。試験運行中の新型ジェリーフィッシュが墜落し、開発者であるファイファー教授をはじめとした開発チームの面々が死亡した。しかし、そこに明らかな他殺体があったことから、事故ではなく、事件であると判断されるのだが……
第26回鮎川哲也賞受賞作。
「このミス」など、昨年末の各種ミステリランキングで上位に入っていた本作。当然、期待値を高く設定して読んだわけだけど……
正直、読み始めは「自分に合わないかも!」という感じ。というのは、登場人物は外国人ばかり、しかも、真空気嚢だの新型飛行船だの、さらには物理学だの化学だの……と出てきたものだから。最初の一章は結構、苦戦した。……が、読み進めていくうちに、その辺りについて知識がなくとも全く問題がないし、次々と舞い上がってくる謎にどんどん引き込まれた。なので、結論から言えば、面白かった。
物語は、事故が発生している当時、ジェリーフィッシュに乗り込んでいるウィリアムの視点。事故ののち、それを捜査することとなったレンたち。そして、模型屋でレベッカという少女に出会った私の視点。時系列を異にする3つの視点によって展開。
飛行中で、教授が死亡した。そして、内部での対立を含みつつ、雪の山中に不時着。早く救助が来なければ……そんなサバイバル状態になっているなかで、一人、また一人とスタッフは殺されていく。一方、事故を調査するレンたちは、明らかな他殺体の発見から調査を進めるが、そもそも、この試験運行は何のために行われたのか? すらわからない。当然、動機も……
この作品のすごいところって、謎の見せ方が抜群であるところだと思う。序盤は、3つの視点の中で、飛行船の中での事件が気になる。それはそうで、いきなり次々と人が殺されていく。しかも、別視点で全員が死ぬことも明らかなのだから。ところが、そうなっていく一方で、少しずつ刑事側の視点の「わからない」ところが明らかになっていく中で今度はそちらでの謎。犯人は誰なのか? どうやって? 何となく、動機はこうだろう、というのがわかるのだけど、じゃあ、その関係者は、というと犯人候補がわからない。そして、そういうものが脱出トリックの仕掛けに対する見事な目くらましに……
私が鮎川賞の受賞作を読むのは、大抵、年を越してからになってしまっているのだけど、昨年の鮎川賞は大当たりだったな、と思わずにはいられない。

No.4258


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