(書評)尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る

著者:紺野アスタ



久佐薙卓馬は閉鎖されたデパートの屋上遊園地で、傷だらけのカメラを構える少女・尾木花詩希と出会う。卓馬は彼女、「心霊写真を撮っている変わった女」と噂される詩希に屋上遊園地に出るという「観覧車の花子さん」を撮ってほしい、と依頼するのだが、詩希は「幽霊なんていない」とすげなく……
滅茶苦茶に上から目線の評価になってしまうのだけど、すごくバランスの良い作品だなぁ、というのを読み終わってまず思った。
物語は、冒頭に書いたように廃墟となったデパートの屋上観覧車に出る幽霊を撮ってほしいと卓馬が依頼することから始まる。その幽霊というのは、その観覧車の事故で今なお意識不明になっている卓馬の姉だから。もし、意識不明なのが、そこに意識を残しているかだ、とすれば写真に撮り、解放することで……となるかもしれない。一方、詩希は過去の出来事もあって色彩、味覚などを失っている。そして、心霊(ゴースト)を撮る、というのは、それを取り戻すカギにもなる。けれども、周囲からは変わり者としてあつかわれ、本人もコミュニケーションなどの能力が低くて……
卓馬の姉は、なぜ、観覧車で事故にあったのか? 調べてみると自殺ではないか? そして、ヌード写真のモデルなどをしていたのではないか? というものが浮かんでくる。その一方、詩希が色彩などを失った原因となった事件。彼女のことを嫌う「写真部」の面々、嫌がらせ……。詩希が色彩などを失った、なんていうところからわかるように、基本的には「褪せた」雰囲気のなかで物語が進んでいく。実際、途中での卓馬と詩希の対立とか、卓馬の真相についてもとか、ビターな部分がある。
でも、じゃあ、ただ重く、苦しいだけの話なのか? というと、そうではない。
屋上で見かけた詩希に依頼に行くと、「あんなところを見られて、変な奴と吹聴されたら困る」と詩希が巨大なカメラで殴り掛かってくる、とか、詩希がフィルムカメラに拘るのは、写真がどうこうじゃなくて、単に金がなくて安く買えたカメラだったから、とかボケも結構優秀(笑) また、(書類上では所属となっている)園芸部の部室に引きこもっている古森先輩とかほっこりさせてくれるキャラクターがいるのも好印象。緩急がしっかりとついているのだ。
そして、そんな中での真相については……
すれ違い、ということになるんだろうか。卓馬の姉と事件の黒幕の関係。そして、その黒幕が、さらに動き出した理由。卓馬のいう「ゴースト」と、詩希のいう「ゴースト」の意味するものの違い。あらゆるところですれ違いが生じており、結果として、それが悲劇に……
苦く、苦しい作品だけど、でも、ほっこりさせる部分で重くなりすぎず、そして、少しずつ変化していく詩希の姿に光も見える。タイトルの通り、色褪せた雰囲気が、だんだんとカラフルになっていく。そんな雰囲気を感じさせる作品だ、と感じられた。

No.4260


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