(書評)時限病棟

著者:知念実希人



目覚めると梓は、病院のベッドで点滴を受けていた。なぜ、自分はここのいるのか? しかも、同じ部屋には同じような状況の人々が……。廃病院に監禁された男女。そんな彼らの前には、クラウンを名乗る存在からミッションが。6時間というリミットの中でクリアできなければ、病院は炎の海に! 命がけのリアル脱出ゲームをクリアできるのか? そして、クラウンの目的は?
一応、『仮面病棟』の続編になる作品。ネタバレになってしまうが、『仮面病棟』の舞台となった田所病院が今回も舞台になっている。勿論、前作の事件後、病院自体は閉鎖されている、という設定であるが。
冒頭に書いたように、閉鎖された病院に監禁された男女。そして、そんな面々の前に現れるのは、クラウンからの指令。例えば、「襟をただし、真実をみつけるための、鍵を探せ」というメッセージ。それは何を意味しているのか? ある意味、なぞなぞの様なミッション。それを繰り返しながら、脱出へ向けて進んでいく。しかし……
正直なところ、一応、主人公的な立ち位置である梓が、アトラクションとしてのリアル脱出ゲームの愛好家である、ということもあって、謎が提示されてもあっという間に解かれてしまうので「あれっ!?」という感じはある。ただ、それがテンポの良さにつながっている、というのも間違いないだろう。読み始めたときと違い、中盤からはそこが主眼でないというのは明らかになるわけだし。
そもそもの自己紹介の時点で、医療関係者が多いというのが判明する監禁された面々。しかし、次々と出てくるクラウンのミッションの中で明らかになるのは、実はある騒動の中で死亡した医師の関係者である、という事実。医師としてだけでなく、脱出ゲームプロデューサーとしても知られたその医師は、田所病院の跡地を使った企画にもかかわっていた。しかし、そこで起きた映画監督の殺人犯という疑いを抱かれて……
クラウンのミッションの中で明らかになる関係性。その中で、映画監督の死は殺人なのか? そして、医師の死は? 脱出ゲームから、やがて、関係者同士のえげつない感情のぶつかり合いへと転じ、そして……
最後のひっくり返しについては、そもそも、医学の知識のない私には判断のすべがない。無理だろう、という気もする。
でも、場面転換の巧みさと、リーダビリティの高さ、そして、オチ。個々をとれば穴もあると思う。しかし、そういう部分を差し引いて一級品のエンタメ作品に仕上げている、という評価をしたい。

No.4265


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  •  時限病棟
  • 時限病棟 作:知念 実希人 発行元(出版):実業出版社 ≪あらすじ≫ 目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。なぜこんな場所にいるのか? 監禁された男女5人が、拉致された理由を探る……。ピエロからのミッション、手術室の男、ふたつの死の謎、事件に迫る刑事。タイムリミットは6時間。 大ヒット作『仮面病棟』を凌ぐスリルとサスペンス。 圧倒的なスピード感。衝撃...
  • 2017.01.17 (Tue) 22:37 | 刹那的虹色世界