(書評)ソシャゲライター クオリアちゃん 恋とシナリオと報酬を

著者:下村健



「心に引っかかる言葉ばかりだ。いいセンスをしている!」 大学の脚本科に通う松平は、シナリオライターとして活躍している先輩・川口久月麗に自らの言葉の限りを尽くして告白した。……結果、その実力を買われ、平は、ソーシャルゲームのシナリオ制作に関わることとなって……
著者は『チェインクロニクル』などを手掛けている現役のソシャゲライター。その内情暴露的な話、といえるだろう。
こういうと何だけど、「へー」と思うところは沢山ある。例えば、PCゲームなどのシナリオと同じく、1文字いくら、というような換算で報酬が支払われる。しかし、PCゲームなどとは異なり、そもそも文字数が少ないのが特徴、故に収入が少なく抑えられてしまう。また、そもそもの文字数が少ないため、いかに短い文章で心をつかむのか、というのが問われる……なんていうのは、小説とか、従来のゲームシナリオのそれとは違うのだ、というのがよくわかる。また、それ故に、中にはてきとーに文章を綴って、みたいな人も見受けられる。
さらに、小説家とかを題材にした作品でもよくあるけど、締め切りとの闘い、みたいなものは常に付きまとうし、また、それが遅れることで……というのも。そもそも、普通のゲームのように何か月もかけて作成と違い、締め切りがタイトで、発注から1日で、みたいなこともまかり通ってしまう。
そんなブラックな状況を描きつつ、毎回、クララ先輩が平に課題を与える形で、「こういう形でシナリオを作っています」というのが説明されていく。そういう意味では、ソシャゲ講座みたいな感じになっている。
ただ……
これって、「小説として」面白いか?
と問われると、「うーん」と感じてしまう。先に書いたように、物語の大半はブラックな話を含めて、どんな風にシナリオを作っている、というのの説明に費やされる。そして、その中で、クララの兄弟の能力とかも出てくるので、そこで苦しむ、みたいなものも少なくアッサリ。終盤、平が自分一人で! と言って苦しむシーンはあるけど、逆にそういうのがなければ、本当に単なる説明文になってしまうしなぁ……
なんか、中途半端に出てくる異能力の存在も何だかな……という感じで……
情報としてのの面白さ、は間違いなくある。でも、小説としての完成度、という意味ではちょっと低いかな? と思わざるを得ない。

No.4272


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