(書評)きみといたい、朽ち果てるまで 絶望の街イタギリにて

著者:坊木椎哉



世界からはじき出された人々が集う無法の街・イタギリ。そんな街でゴミ収集と死体運搬の仕事に従事する無戸籍の少年・晴史。ただ、その日の糧を得る日々で唯一の希望は、似顔絵を描きつつ客を引く少女・シズクへの淡い想い。だが、そんな恋心さえ、この街では……
第23回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作。
本作と直接関係ないかも知れないのだけど、この「ホラー小説大賞」の受賞作を読んでいると、「ホラー小説」って何だろう? という思いを抱くときがある。例えば、『ぼぎわんが、くる』(澤村伊智著)なんかは、何だかわからない、恐ろしいものがやってくる、という素直に「怖さ」を強調した作品。かと思えば『夜市』(恒川光太郎著)なんかは、普通の社会の傍らにある奇妙な、しかし幻想的な世界を描いた物語。『ホーンテッド・キャンパス』(櫛木理宇著)のように、怪異はあるものの謎解き要素の強いものもある。
そんな作品の中に並べるなら、この作品もまた、独特な街、世界。それを描いた作品といえるだろう。
冒頭に書いたように、主人公・晴史はゴミ収集と死体運搬で日銭を稼ぐ存在。家では、ロクデナシの父親が飲んだくれているだけ。母はおらず、死体の運搬も秒しか自殺しかない(他殺でも、そう処理される)街では、死体処理もただのヨゴレ仕事。そして、当然、女たちは身体を売っており、晴史の想い人・シズクも例外ではない……
そんな街の日々が、晴史を初めとして、オカマである竹林老人、その下に配属されたばかりの作家志望・樹戸らのやりとりを中心にしてつづられていく。退廃的ではあるし、確かに最底辺な日々。しかし、その中でのあっけらかんとした日常。物語の大半は、そんな世界設定でつづられるものの、時に動き続ける死体である「シナズ」や、黒い影などという設定も出てくることで自然と世界観が身近に感じられる。そして、そんな中で、竹林老人が亡くなって……。
竹林老人の死で劇的に物語が動くわけではない。けれども、それをきっかけに少しずつ人間関係は変遷していく。そして、物語の背景と思われていた娼婦連続殺人が表に出て……
こうやって書いていて思うのは、本作っていうのはしずかだけど、確実に迫ってくる絶望感というのがテーマだったのだな、ということ。死体処理の描写とかはあるので、グロいシーンはある。でも、決して怖いというわけではない。散々書いてきたけど、劇的な流れもない。むしろ、あっけらかんとしている。でも、そんな状態だからこそ、救いのない状況が浮き彫りにされる。
ある意味では、「雰囲気作品」かもしれない。でも、そんな雰囲気をしっかりと描ききり、終盤の美しくも残酷なシーンにそのピークを持ってくる。面白かった。

No.4276


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